呪いを廻る戦いの世界へと足を踏み入れた高校生の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)を中心にしたダークファンタジー作品『呪術廻戦』(芥見下々著/集英社刊)。
「週刊少年ジャンプ」で、2018年から連載が始まると、コミックスはシリーズ累計発行部数9,000万部を突破(デジタル版含む)。2021年に公開された映画も全世界累計興行収入265億円となる大ヒットとなるなど、世界中から熱い視線を集めています。
デジタル手法で制作されている『呪術廻戦』。その創作工程を、作者の解説も交えながら一挙に公開する注目の展覧会が、Hikarie Hallで始まりました。
Hikarie Hall「芥見下々『呪術廻戦』展」会場入口
会場は入場待機列から注目。「芥見下々×『呪術廻戦』年表」として、漫画、アニメ、ミュージカルなど芥見下々氏のデビューから『呪術廻戦』の歩みまでが紹介されています。
芥見下々×『呪術廻戦』年表
会場に入ると、領域之壱「プロトタイプ&ネーム」から。ここでは、最終的な原稿ができるまでの貴重な資料といえる、ネームや下書きが展示されています。
なかでも注目は「週刊少年ジャンプ」の増刊である「ジャンプGIGA」において4話連載され、後にコミックス第0巻として刊行された『東京都立呪術高等専門学校』の秘録ネーム。これまで未公開のネームの一部が、本展で初公開されました。
領域之壱「プロトタイプ&ネーム」
そしてデータの残る『呪術廻戦』の連載第1話(1巻)〜第236話(26巻)までのネームと下書きも、映像で投影展示。
ネームは4,400ページ以上、下書きは3,000ページ以上に及び、費やされた時間を感じさせます。
芥見氏が手書したアナログのネームや、芥見氏と担当編集がやりとりした「返しネーム」(担当編集がネームを読んでの指摘)などもあり、創作のプロセスがよくわかります。
領域之壱「プロトタイプ&ネーム」
領域之弐は「デジタル作画メソッド」。デジタル作画環境での漫画制作は、今やスタンダードとなりつつありますが、その手法は作家ごとに千差万別です。
ここでは芥見氏とアシスタント陣がどのような工程を経て、『呪術廻戦』が生まれていくのかが解説されます。
ユニークな展示が、デジタル<多重層作画>立体模型。これはデジタル原画を構成しているレイヤーをオブジェ化したもので、1枚のデジタル作画は、重なり合う「イラストの多重層構造」であることをイメージしています。
領域之弐「デジタル作画メソッド」 デジタル<多重層作画>立体模型
またこのエリアでは、4連ディスプレイで原画が完成する工程を展示。
芥見氏とアシスタント陣がどのような工程を経て1枚の原稿を完成させていくか、その流れが明らかにされています。
領域之弐「デジタル作画メソッド」 原画データ体感ディスプレイ<4連マルチVer.>
領域之参「連載原稿総力解説」が展覧会のメインといえる、ストーリーごとに区切ったエリア。「京都姉妹校交流会〜起首雷同編」「死滅回游編」など6編について、ネームや下書き、背景画を交えて、作品づくりの最深部が解説されます。
それぞれに添えられている、芥見下々氏によるQ&A形式のコメントも必見です。
領域之参「連載原稿総力解説」
またここでは『呪術廻戦』の作画を支える6名の精鋭アシスタント陣も紹介。
それぞれのアシスタント陣が手がけた背景画を使ったフォトスポットもお楽しみいただけます。
領域之参「連載原稿総力解説」 フォトスポット
最後の領域之肆「カラーイラスト」は、カラーイラストを巨大サイズで展示。デジタルで描かれた作品だからこそといえる拡大出力で、作品の世界観にどっぷり浸れるエリアです。
本展のキービジュアルも、特大サイズで展示。作画の様子をおさめたタイムラプス動画も公開されています。
領域之肆「カラーイラスト」
会場最後の展覧会公式ショップも、充実の品揃え。お目当てのグッズがある方は、早めに来場されることをおすすめします(来場は日時指定性です)。
オフィシャルグッズの数々
名作漫画が生まれるまでのプロセスを惜しみなく公開する、貴重な展覧会。ファンはもちろんですが、漫画家や編集者を目指している方にも見ていただきたい展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年7月5日 ]
©芥見下々/集英社