まもなく関西万博が開催される大阪は、すこしそわそわしたような風が流れています。そんな中、「青春」というタイトルがつけられた建築家安藤忠雄の展覧会がはじまりました。

会場「挑戦の軌跡」ゾーン風景
本展は、「挑戦の軌跡」と「安藤忠雄の現在」の2ゾーンで構成されていて、約60の建築プロジェクトと、スケッチやドローイング、模型などが230点ほど出展されています。 半世紀に及ぶキャリアの軌跡を一望することができる最初の展示室では、初期の代表作「住吉の長屋」「六甲の集合住宅」そして美術館などの映像や資料、また選りすぐりの70の住宅模型が並びます。

初期の代表作の一つ「水の教会」のインスタレーション
そして見どころの1つは、初期の作品「水の教会」のインスタレーションでしょう。北海道の星野リゾートトマム内にあるチャペルの一部が原寸大で再現されています。大自然の四季折々の風景がスクリーンに映し出され、鳥の声も聞こえてきます。実際に水が張られてた水盤に立つ十字架を目の当たりにすると、展覧会会場にいることを忘れてしまいそう。ぜひゆっくり椅子に座り空間を楽しんでみてください。

「ブルス・ドゥ・コメルス」の1/30サイズの模型

直島アートプロジェクトについて紹介
2つめのゾーンでは近年、そして現在進行形のプロジェクトが紹介されています。建築物をつくるだけではなく、つなぐ、育てるという安藤さんの思想を知ることができます。パリの歴史的建造物「ブルス・ドゥ・コメルス」の再生プロジェクトの模型、中之島プロジェクトⅡ(アーバンエッグ+地層空間)の全長10メートルのドローイングは圧巻です。また80年代末から進行形である直島アートプロジェクトを音楽映像と模型で紹介する空間にも魅せられます。そして近年の安藤さんの社会貢献活動「こども本の森」についても、現在建設中、そして計画中のものを含めて一挙に紹介されています。会場を通して、広がりの壮大さ、力強さを感じずにはいられません。

会場風景
展覧会の最後を締めくくるのは、VS.の特徴であるSTUDIO Aでの映像インスタレーションです。天井高15m、3面のスクリーンに「光の教会」「ブルス・ドゥ・コメルス」「真駒内滝野霊園頭大仏殿」が映し出され、迫力に呑み込まれていきます。

直接壁にドローイングをする安藤忠雄さん

本展について話す安藤忠雄さん
「青春」と題した展覧会は、若いころから今までを回顧する意味合いが含まれているのかと想像していました。が、安藤さんにとって「青春」とはまさに今。おもしろいものを創造したい、挑戦し続けるという気持ちをもって生きているときを「青春」と位置づけています。多くの人に刺激をもらい、助けてもらったと話す安藤さんですが、この展覧会を通し、わたしたち来館者も同様に多くのものを受け取ることになりそうです。

会場外観

大阪市内の安藤建築をマップで紹介。ぜひ来阪し、安藤建築を巡ってください。
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2025年3月19日 ]