8館で構成されるシグネチャーパビリオン。後半は、河瀨直美(映画作家)、河森正治(アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーター)、落合陽一(メディアアーティスト)、石黒浩(大阪大学教授、ATR 石黑浩特別研究所客員所長)の4氏が手がけるパビリオンをご紹介します。
Dialogue Theater-いのちのあかしー/河瀨直美
テーマ「いのちを守る」
奈良県の中学校と、京都府の小学校分校——2つの廃校を舞台に構成されたパビリオン。廃校という場所の記憶を活かし、時を受け継ぐ空間として再生させています。
「エントランス棟」「対話シアター棟」「森の集会所」という3つの建物に加え、シンボルとして大きなイチョウの木がそびえ立ちます。
メインコンテンツは「対話シアター棟」で行われる「初対面の2人による対話」。毎日テーマが変わり、来館者の中から選ばれた1人と、事前にワークショップを受けたもう1人が、スクリーン越しに対話を交わします。その様子を、他の来場者全員が見守るというユニークな形式です。
異なる国や文化背景を持つ人々が対話を通じて「分断」を乗り越え、より良い未来を共に模索する場となっています。

Dialogue Theater-いのちのあかしー/河瀨直美

Dialogue Theater-いのちのあかしー/河瀨直美
いのちめぐる冒険/河森正治
テーマ「いのちを育む」
「人間中心」から「いのち中心」へ——。視点を大きく転換し、すべてのいのちを守り、育むことの大切さを伝えるパビリオンです。
キーワードは「いのちは合体・変形だ!」。宇宙、海、大地に存在するいのちのつながりを、河森氏ならではのスケール感で体感できます。
内部は「超時空シアター」と「ANIMA!」からなるイマーシブ展示と、生命の多様性や進化を紹介するリアリティ展示の2エリアに分かれています。「超時空シアター」では、VRゴーグルを使って水や大気の循環、食物連鎖といった現象が宇宙規模で展開されます。「ANIMA!」では、立体音響や床振動を使い、身体でいのちの連環を感じ取ることができます。
建築素材にも注目を。真水ではなく大阪湾の海水を用いた、環境に配慮したコンクリートパネルを採用しています。

いのちめぐる冒険/河森正治

いのちめぐる冒険/河森正治
null²/落合陽一
テーマ「いのちを磨く」
外観からして目を引くパビリオン。鏡面状のうごめく膜素材が壁面全体に張り巡らされており、周囲の風景や来場者自身の姿が歪み、変化します。清春芸術村で話題を集めた“有機的な変形ミラー”が、パビリオンとして結実しました。
内部も全面が鏡張り。天井と床にはLEDが仕込まれ、合わせ鏡の無限空間は圧巻です。来場者は「Mirrored Body」と呼ばれる、身体情報から生成されるデジタルアバターと出会い、時間や空間の制約から解き放たれるような体験をします。
ちなみにパビリオンの名称「null²」は、ヌルの2乗で「ヌルヌル」。落合氏らしい遊び心のあるネーミングです。

null²/落合陽一

null²/落合陽一
いのちの未来/石黒浩
テーマ「いのちを拡げる」
アンドロイド研究の第一人者である石黒浩が手がけるパビリオンでは、人間がAIやロボットと融合することで「いのち」そのものの在り方を変えていくという未来像が提示されます。
黒く巨大な建物の外壁には水が流れ、ダイナミックな演出が訪れる人を迎えます。内部にはアンドロイドやロボット、CGキャラクターなどのアバターが登場し、来場者を未来社会へと誘います。
展示は3つのゾーンに分かれています。ZONE1では、日本人が古くからモノにいのちを宿すという文化を紹介。ZONE2では、アンドロイドと共に暮らす50年後の世界を物語形式で体験。ZONE3では、アート作品として、人間が科学技術と融合し、身体の限界を超えた1000年後の姿を、音と光に包まれた幻想的な空間で描き出します。

いのちの未来/石黒浩

いのちの未来/石黒浩
8館すべてが見どころ満載ですが、シグネチャーパビリオン8館をじっくり鑑賞すると、おそらく丸1日かかるほどの充実度です。他のパビリオンやイベントをまわる予定がある場合は、余裕を持ったスケジュールを立てることをおすすめします。
未来を見つめる多様な「いのち」のかたちに、ぜひ出会ってみてください。
→ 未来を体感!シグネチャーパビリオン徹底ガイド[1]宮田裕章、中島さち子、福岡伸一、小山薫堂