展覧会の英語サブタイトルは「JAPAN'S FAVORITE HERO」。坂本龍馬は小説・TVドラマ・マンガなどでも繰り返し描かれ、歴史上の人物としては間違いなく人気ナンバーワンの存在です。
龍馬に対する関心が高い事から、龍馬にまつわる研究は今でも進んでおり、新資料が発見される事も。本展では近年の研究成果も踏まえながら、龍馬の実像に迫っていきます。
まずは龍馬周辺の資料から。志半ばで非業の死を遂げた龍馬の朋友・武市半平太の自画像や、龍馬の婚約者・佐那の名も見える北辰一刀流の目録など、龍馬好きにはたまらない資料が並びます。
会場入り口から展覧会の大きな特徴といえるのが、龍馬が書いた数々の書状。龍馬の直筆手紙がこれだけ揃うのは極めて異例です。
龍馬が書く手紙は、兄の権平や目上の人に宛てたものは常識的な文面ですが、姉の乙女や姪の春猪など気のおけない人に対しては、極端に砕けた表現になります。
会場には、楽しい絵入りの手紙や、巻紙を何度か反転させながら書いた手紙なども。龍馬の自由奔放な生きざまが透けて見えるようです。
原文のままではなかなか読みにくいですが、会場では現代文で解説されていますので、龍馬の想いをじっくりお楽しみいただけます。
龍馬直筆の手紙が並びます展示物としては、これが目玉でしょう。龍馬が近江屋で暗殺された時に所持していた愛刀、「陸奥守吉行」こと《刀 銘吉行 坂本龍馬佩用》は、会場後半で紹介されています。
刀は大正時代の火事で被災し、「吉行」の刀らしい反りや刃文がないため、由来を疑問視する声もありましたが、文化財用のスキャナーで再調査したところ、独特の刃文を確認。坂本家に伝わる書状から、被災の後に研ぎ直した事も分かり、本物であると結論づけられました。
例の刀剣ゲームにも登場する刀なので、展示ケースの前には若い女性が多いと思いますが、私のようなシニアの龍馬ファンも見逃すわけにはいきません。
「陸奥守吉行」こと《刀 銘吉行 坂本龍馬佩用》巡回展として開催されている本展。東京展では江戸東京博物館が所蔵する「幕府軍艦第二長崎丸関係資料」も紹介されています。
黒船の衝撃から、日本においても海軍の充実を目指した龍馬。勝海舟に心酔し、神戸港海軍操練所の設立に奔走しました。会場最後は、深い師弟愛で結ばれていた勝海舟と龍馬の肖像で終わります。
勝海舟の資料も誰もが幕府や藩を第一に考えていた時代において、ただひとり国全体を視野に入れていた坂本龍馬。龍馬に興味を持ったきっかけは、司馬遼太郎でも、福山雅治でも、刀剣乱舞でも構いませんが、その実像は、ぜひ会場の現物資料でお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月28日 ]※会期の途中で展示替えがあります
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