MIHO MUSEUM「猿楽と面 大和・近江および白山の周辺から」
文 [エリアレポーター]
カワタユカリ / 2018年3月9日
少し風は冷たいですが、日差しをあびると春を感じます。そんな心躍る季節の到来とともに、滋賀県にあるMIHO MUSEUM(ミホミュージアム)では春季特別展『猿楽(さるがく)と面(おもて)―大和・近江、および白山の周辺から―』と題した展覧会が始まりました。
猿楽というのは、能と狂言で構成される現在の能楽の古い呼び方です。起源は大陸から伝来した「散楽(さんがく)」に由来していると言われているそうですが、実はあまり明らかにされていないということです。
この展覧会の見どころの1つは、猿楽が盛んに行われた地域をテーマに、古い時代から隆盛期にわたる面を幅広く見られる事でしょう。また、面を所蔵している寺社からはできる限りすべての面を出展していただき、全貌をみせようという試みがされています。猿楽の能が寺社で催されていたことで、信仰と切り離せないものだったと改めて実感できます。これだけのものが各地の寺社で保管され続けていることが、何よりの証拠ではないでしょうか。
《翁》伝日光作 東京・永青文庫
複数の人たちが力を合わせて演じ、継承したこの芸能の場を「座」と呼んでいたそうです。(今の劇団で「・・・座」とあるのは、そういう意味なのでしょうか。)日本人は昔から集団で何かをするというのが得意だったのかなと思いを馳せます。比べるのはおかしいかもしれないですが、ふと「バベルの塔」を思い浮かべました。民が一致団結し、神を超えるような天高くそびえる塔を建設しようとしますが、それを知った神が塔を崩し、同じ言語を話していた人たちをバラバラに散らしたという聖書にでてくる物語です。日本人なら、こんな結末を迎えていなかった気がしました。
実は私は能を一度も見たことがありません。難しいイメージが先行しすぎていたのですが、こうやって様々表情の面をみていくうちに、一度能を観に行こうかなという気になってきました。
女性をとっても、若い女性、年配の人、面長、小顔、たれ目さん・・・と驚くほどのバリエーションがあったり、思わずクスッと笑ってしまうようなものがあったり、どんどん惹かれていきます。
よく無表情を「能面のよう」と例えますが、滅相もない!能面さん、今まですみませんでした。
《老女》岩手・中尊寺
《祖父》
緑が芽吹き、桜が咲き、ミホミュージアム周辺の景色はとても美しく変化します。中世の人たちが、花びら舞う場所で面をつけて踊り、観客が楽し気に笑う様子がミホミュージアムから見えるかもしれません。
エリアレポーターのご紹介
|
カワタユカリ
美術館、ギャラリーと飛び回っています。感覚人間なので、直感でふらーと展覧会をみていますが、塵も積もれば山となると思えるようなおもしろい視点で感想をお伝えしていきたいです。どうぞお付き合いお願いいたします。
|
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?