哺乳類や昆虫、ミイラや恐竜、宝石など、様々な特別展を開催してきた国立科学博物館。現在、科博で初めてとなる「鳥類」をテーマにした展覧会が、開催中です。会場には古今東西の身近な鳥から、珍しい鳥、絶滅してしまった鳥など、600点以上の鳥の標本が集結しています。
展覧会は序章と8つの章で構成。それぞれに鳥の驚きの生態などを紹介する「鳥のひみつ」コーナーも開設されています。
国立科学博物館 特別展「鳥」会場入口
獣脚類恐竜の子孫である鳥類。第1章「鳥類の起源と初期進化」では、骨格の構造や飛行方法、始祖鳥から原生鳥類にいたるまでの形態の進化を辿っていきます。
天井から現れるのは、およそ2600万年前に生きていた「ペラゴルニス・サンデルシ」。史上最大の飛べる鳥といわれた、翼開長7mもの大きさを実物大生体モデルで復元しています。
第1章「鳥類の起源と初期進化」 ペラゴルニス・サンデルシの復元
第2章「多様性サークル」では、展覧会のサブタイトルとなっている“ゲノム解析”による研究ついてを紹介します。多くの生物の遺伝情報を解明する最新のゲノム解析によって、これまでの23から44もの分類となった鳥たち。その進化の多様性を体感することができます。
第2章「多様性サークル」
第3章以降では、現生する様々な鳥たちが登場します。11,000種を超えるといわれる現生の鳥は、口内の上部の骨の形によって古口蓋類と新口蓋類に分けられます。
古口蓋類に分類されるダチョウやヒクイドリなどは、飛翔力がない代わりに走ることを得意とする走鳥類のなかまです。一方、カモやキジは新口蓋類に分類され、恐竜が絶滅した白亜紀末も生き延びた鳥たちです。人間の食料になってきた鳥のグループでもあり、狩猟鳥とも呼ばれています。
第4章「カモやキジのなかま」
新口蓋類の中でもキジカモ類を除いたグループを新鳥類と呼び、さらに陸鳥と水鳥に分けることができます。陸鳥はハトやヨタカ、カッコウなど、水鳥にはツルやチドリ、ミズナギドリが見られます。
10種以上のペンギンも大集合しています。南極とニュージーランドでは陸生の肉食獣がいないため、直立姿勢で短い脚に進化したペンギンが誕生しました。
第5章「陸鳥や水鳥のなかま」
第5章「陸鳥や水鳥のなかま」ペンギン大集合
哺乳類や鳥類を捕食とする猛禽類には、タカやハヤブサなどの昼行性とフクロウ類の夜行性の2つのタイプがあります。
会場でもひときわ目立つピラミッド型に並んでいるのは、タカのなかま。強力な爪や趾により、繁栄をもたらしたタカの堂々たる姿を感じることができます。
第6章「猛禽とその仲間」
世界の熱帯域に分布しているインコは、太く湾曲した嘴や立った姿勢、太く短い脚などの他の鳥とも区別がしやすい特徴をもっています。
一方、タカの祖先から出てきたフクロウは、夜行性に進化し、皿状の顔で音を集めることで獲物の位置を特定できる能力をもっています。表面がベルベット状になっている翼の羽は、風を切る音を消すことができる機能も備えています。
第6章「猛禽とその仲間」インコの目
第6章「猛禽とその仲間」フクロウの目
400種以上の鳥を観察したことがあると、バードウォッチャーの中でも上級者といわれるそうですが、その数をはるかに超える数の鳥に出会える展覧会。ハトやカラスなど日常的に目にする鳥からレアな鳥まで“推し鳥”を探してみるのはいかがでしょうか。
特設ショップでは、雪の妖精・シマエナガなどのぬいぐるみや和菓子のひよ子など様々なグッズを販売しています。
特別展「鳥」特設ショップ
特別展「鳥」特設ショップ シマエナガのぬいぐるみやポーチ
展覧会は、2025年3月15日から名古屋市科学館に巡回予定です。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2024年11月1日 ]