朝香宮夫妻が1930年代に建てた東京・白金台にある旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)。 東京都庭園美術館で、年に一度開催される“建物”自体が主役となる展覧会に足を運びました。
東京都庭園美術館 本館 外観
東京都庭園美術館のシンボルのひとつと言えるのが、フランスの室内装飾家のアンリ・ラパンがデザインした「香水塔」。
もともとは室内用の噴水機でしたが当時、朝香宮允子妃が上部の照明内部に香水を施し、照明の熱で香りを漂わせたという由来から、この名前がつけられています。
(中央奥)《香水塔》1933年頃
今回の展覧会では、朝香宮家の人々にも焦点をあて、使われていた家具や調度品も並んでいます。
会場に入り、真っ先に目に止まる鮮やかな小袖は、允子妃が結婚前に着用していたものです。近寄って見ると、菊や藤、二羽の尾長鳥が施されていることが分かります。
東京都庭園美術館本館 大広間
アール・デコ様式に魅せられた朝香宮夫婦が建設されたこの邸宅は、細かなところまでこだわりがあります。
東京都庭園美術館本館 第一階段
2階の居住空間は、主に宮内省内匠寮によってデザインされたもの。普段の展覧会では作品に目がいってしまいますが、この展覧会では建物の細部まで 見入ってしまいます。
東京都庭園美術館本館 2階広間
「ゴルフの宮様」と呼ばれるほどゴルフ好きで知られ、休日には自宅の庭で練習を行っていたという鳩彦王。 埼玉県の“朝霞”市は、名門のゴルフクラブが移転をする際に鳩彦王の宮号「朝香」から町名がついたという逸話もあるそうです。
東京都庭園美術館 殿下寝室 展示風景
今回最も楽しみにしていたのが、温室として屋上階に設けられた「ウインターガーデン」です。人造大理石や国産の大理石を用いた市松模様の床上に置かれたマルセル・ブロイヤーがデザインをした椅子。とてもモダンな雰囲気です。
ウインターガーデン
天皇家や皇族・家族の間では、婚礼や成年式など人生の節目となる場面を記念して、さまざまな品々の贈答が行われていました。新館では、美術工芸の歴史においても貴重な調度品が並びます。
新館 展示風景
新館 展示風景
最後の展示室では、可愛らしいボンボニエールがずらり。 ヨーロッパでは祝い事の際に砂糖菓子(ボンボン)を配る伝統があり、お菓子を入れる容器をボンボニエールと呼びました。
次第に引き出物の小型工芸品全体のことをボンボニエールと指すようになり、日本でも明治20年代から皇室・宮家でこの伝統が取り入れられるようになりました。
様々なボンボニエールを展示
箱型のものや香合形だけでなく、動物や乗り物など豊富なモチーフでつくられたボンボニエール。
その数の多さやレパートリーに目移りをしつつ、私のお気に入りのボンボニエールを撮ってみました。皆さんはどのボンボニエールがお気に入りでしょうか。庭園も楽しむことができる東京都庭園美術館で、初夏の気配を感じながら鑑賞を楽しんでみては。
地球儀の形をしたボンボニエール
[ 取材・撮影・文:P. K-KO / 2023年4月8日 ]
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