大英博物館、シカゴ美術館、ホノルル美術館など海外から貴重な浮世絵が里帰りする、日本初の初期浮世絵展
新興都市江戸に暮らす人々が、太平の世に自信と愛着を深めていく17世紀後半、浮世絵の始祖と位置付けられる菱川師宣(?-1694)が活躍を始めます。流行の衣裳に身を包む美人たち、人々を熱狂させた歌舞伎、そして江戸における日々の愛すべき暮らしなど、今に生きる楽しみを積極的に肯定する浮世絵は、時代を謳歌する気分とも相俟って、高い人気を得ることになりました。
浮世絵は、木版画として広く人々に普及しましたが、量産による値段の安さ、また当世の流行を即時に取り入れた木版画制作の速さという特徴が、庶民に至るまで気軽に絵を楽しむことができるという世界でも稀な文化状況を育んだのです。一方で肉筆画、すなわち日本絵画の伝統的な技法で描く屏風や掛軸、絵巻物などの形式でも制作され、富裕層の需要も満たしていたのです。
どのように浮世絵は生まれ、発展し、なぜ近代に至るまでの高い人気と需要を継承できたのでしょうか。本展覧会では、大英博物館、シカゴ美術館、ホノルル美術館をはじめ海外からの里帰り品を含めた版画・肉筆画の名品約200点により、浮世絵草創期の世界を紹介、版と筆それぞれの表現の魅力を探ります。新しい都市の活況を伝え、時代のダイナミックな動きに呼応して、素朴ながらも力強い存在感を発揮した初期浮世絵の美を十分ご堪能いただけることでしょう。
近世初期風俗画から菱川師宣前後の浮世絵誕生の状況、鳥居清信(1664-1729)や鳥居清倍(生没年不詳)が歌舞伎絵界に圧倒的な地位を築く初期の鳥居派、浮世絵界のトリック・スター奥村政信(1686-1764)や石川豊信(1711-85)の多様な活躍、そして高度な多色摺木版画技法、すなわち錦絵が誕生する鈴木春信(1725?-70)の登場までを通観する、日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会です。
※会期中に一部展示替えがあります。