展示風景
東京を皮切りに新潟、静岡を巡回した「ボストン美術館所蔵 THE HEROES 刀剣×浮世絵-武者たちの物語」がついに兵庫へやってきました。
会場入口
アメリカ合衆国で最も早くに誕生した美術館の一つ、ボストン美術館。世界最高水準の日本美術を多数コレクションしていることでも知られています。
展示風景
本展では、すべてが日本初公開となる同館所蔵の武者絵118点と、それらに共通するイメージがデザインされた鐔(つば)27点が展示されています。
また600ものボストン美術館刀剣コレクションの中から厳選された20口が半世紀ぶりに里帰りしていることも大きなみどころです。
歌川国芳 「和漢準源氏 源頼光 薄雲」安政2年(1855)
裏面にも凝ったデザインが施されています。(写真で展示あり) 土蜘蛛退治図鐔 銘 嘉永元戊申葉月応需 美も利(印) 嘉永元年(1848)
歌川国貞 「武蔵坊弁慶 御曹子牛若丸」文化10~11年(1813~14)頃
会場には、スサノオノミコトや雄略天皇など「神代の武勇譚」から、平安時代、源平時代、鎌倉時代に活躍した武者や英雄、「太平記」の軍記物語や川中島合戦を題材にしたもの、また「読本(よみほん)」といわれる冒険物語の登場人物を描いた作品などが並んでいます。
みっちりと描き込まれた画面は迫力を感じ、知っている歴史上の人物には一層興味をそそられます。国貞や国芳の浮世絵はここ数年の人気により、展覧会で見る機会が多いですが、武者絵のみが並ぶ風景はカッコよさがより強調されているようで、新鮮味がありました。
魚屋北渓 「江の島の北条時政」天保4年(1833)頃
構図や彩色以外にも注目してください。例えば、弁天財から三つ鱗を授かる時政を描いた魚屋北渓の「江の島の北条時政」。弁天財の衣や雲の部分には、空摺という技法で画面に凹凸がつけられています。見る角度の陰影で立体感が生まれています。
キャプションとともにあらすじを4コマ漫画で表記
月岡芳年の作品を拡大したパネル
さらに気分を盛り上げてくれるのは、ポップな雰囲気の会場構成です。武者絵の題材となる話のあらすじが4コマ漫画で表されていたり、作品の拡大パネルが貼り付けられていたりと、リラックスして鑑賞できる空間となっています。
太刀 銘 三条𠮷則作 室町時代(15世紀)
展示風景
最後の部屋では刀剣が紹介されています。刀工や流派による特徴や、時代が進むにつれ刀の長さが短くなるなどの変化も知ることができました。展示品として目の前にある刀剣はライトを浴びてギラリと光を放っています。
当時の武将たちが大切に取り扱っていたことがわかりますが、実際にそれらは使用されていたものでもあります。刀剣には生々しく歴史がまとわりついているようで、絵画や彫刻などの作品とは違う美の世界が広がっていると感じました。
三代歌川豊国(歌川国貞) 源頼朝の前で舞う静御前 嘉永2~5年(1849~52)頃
本展は写真撮影が可能です。好きな作品や会場の雰囲気などを撮影し、昔から愛される「THE HEROES」をこれからも愛され続ける「THE HEROES」としてシェアしましょう。
兵庫県立美術館の屋上シンボル「美かえる」が迎えてくれます!
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2022年9月9日 ]
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