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    レポート
    生誕100年 清水九兵衞/六兵衞
    千葉市美術館 | 千葉県
    陶芸と彫刻で活躍した清水九兵衞/七代清水六兵衞、国内初の大規模回顧展
    戦後抽象彫刻の第一人者、陶芸家としての初期の作品や最晩年の大型彫刻も
    都市を彩る数々のパブリック・アート(野外彫刻)を制作資料とともに紹介

    清水(きよみず)九兵衛/六兵衛とありますが、二人展ではなく同一人物。戦後から平成にかけて、彫刻と陶芸といういう二つの表現領域で活躍した芸術家です。

    京焼を代表する名家で陶芸家として活躍した後、アルミニウムなどを用いた彫刻家に。後に陶芸にも戻って精力的に活動しました。

    生誕100年を記念し、約170件の作品の資料を通じて、立体造形作家としての生涯を回顧する展覧会が、千葉市美術館で開催中です。



    会場の千葉市美術館入口


    後に清水九兵衛、七代清水六兵衛となる塚本廣は、1922年名古屋生まれ。戦前には建築を、戦争からの復員後には鋳金を学び、1951年に京焼を代表する名家である六代清水六兵衛の養嗣子になりました。

    「清水洋」(65年からは裕詞)を名乗って制作した陶芸作品は、素材の特性を全面に押し出したものです。日展で特選を連続して受賞するなど、高く評価されました。



    「清水洋(裕詩)」の陶作品


    陶芸家としての実績を重ねていた清水ですが、素材である(陶)土との関係には悩んでいました。清水にとって土は、コントロールが困難な「喋りすぎる」素材だったのです。

    1966年の二人展で「五東衛」として初めて彫刻作品を発表、1968年の個展では「清水九兵衛」を名乗ります。過去に制作した器物の多くを自らの手で壊して日展を退会、退路を断って彫刻の道に進んで行きます。



    「五東衞」から「清水九兵衞」へ


    1969年には欧州を訪問。帰国後の1971年に開催した個展で、初めてアルミニウムの彫刻作品を発表します。複数のパイプ状のユニットからなる彫刻作品で、表面はヘアライン加工して光沢を抑え、醒めた質感を持ちます。

    1974年の個展で発表された作品のタイトルは「親和」を意味するAFFINITY(アフィニティ)。彫刻作品が置かれる環境との親和的な関係を考えていました。



    1970年代の彫刻作品と「アフィニティ」


    1960年代の日本では、野外や公共の空間に彫刻を設置する動きが広がっていました。清水は全国各地で始まった野外彫刻展で次々に出品、受賞を重ねていきました。

    この種の作品を制作するにあたり、清水が陶芸を始める前に建築を学んでいたことは大きな利点といえます。精密な図面やマケット(1/10サイズの縮尺模型)で検討しながら創作を進めています。



    「清水九兵衞」と野外彫刻/パブリック・アート


    1980年、養父の六代清水六兵衛が急逝。清水九兵衛は「七代六兵衛」を襲名して陶芸の活動も再開します。

    襲名披露の展覧会は、1987年に開催。発表された作品は、作陶を中断する前の作品にも通じるところがあり、本人も驚いたといいます。

    彫刻に専念するために、2000年には六兵衛の名を長男・柾博に譲りましたが、その後も時折、茶碗を制作しています。



    「七代清水六兵衞」の陶作品


    見応えのある大きな作品が並ぶ「1980年代以降の彫刻作品」のコーナーは、来場者も撮影可能です。

    1979年からはTRAVERSE(トラヴァース)、84年からのFIGURE(フィギュア)のシリーズを発表。以前は床や大地に沿っていた作品が、重力に抗して立ち上がり、能動的に周囲に働きかける存在になりました。

    もともと野外彫刻の耐久性の問題を解決する目的で行われていた朱色の着彩が、屋内の作品にも見られるようになったのも、この時期からです。



    1980年代以降の彫刻作品


    80年代以降の清水は、彫刻と陶芸にまたがって造形活動を続けていきます。

    彫刻では作品が大型化。作品自体が鑑賞者を取り込むような性質を持つようになります。また陶芸では、焼成時の収縮など、偶然生じる造形上の変質も受け入れるようになっていきました。

    1980年代から2000年代にヨーロッパへの旅行などで撮影した写真作品も継続して発表しています。



    彫刻/陶芸/写真


    1994年には個展で大作3点の「京空間」シリーズを発表。壁のように平板なアルミニウムが立てられ、内部は半円筒形の曲面で構成。鑑賞者は内部に引き込まれていきます。

    1990年代後半に発表された陶とアルミニウムを組み合わせた作品は、「九兵衛」と「六兵衛」の統合ともいえる創作です。

    2002年以降は木を核として和紙を4枚貼り重ねた立方体をユニットとして使用。異素材どうしのcorrespond(対応)に向き合いました。



    「京空間」と“CORRESPOND”


    JR京都駅や京都市勧業館みやこめっせなどのパブリック・アートは、見た事がある方も多いかもしれません。関西の作品が目立ちますが、終戦後に稲毛区に下宿し、千葉市に設置された第一復員局留守業務局に勤務するなど、千葉市とも関係がある作家です。

    美術館1階の「さや堂ホール」でも関連展示を実施中。前期は清水の孫にあたる陶芸家・清水宏章さんが個展を、後期は陶表現を行う4人の彫刻家によるグループ展が開催されます。あわせてお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年4月13日 ]

    「五東衞」から「清水九兵衞」へ
    「七代清水六兵衞」の陶作品 七代清水六兵衞《黄釉茶盌》1989年頃
    「清水九兵衞」と野外彫刻/パブリック・アート マケットの展示
    「京空間」と“CORRESPOND” 清水九兵衞《CORRESPOND》2000年 岐阜県現代陶芸美術館
    「京空間」と“CORRESPOND” 清水九兵衞《CORRESPOND D》2006年 愛知県美術館
    「さや堂ホール」の展示 手前は陶芸家・清水宏章さんの作品
    会場
    千葉市美術館
    会期
    2022年4月13日(水)〜7月3日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時-午後6時 (入場は午後5時30分まで)
    金曜日・土曜日は午後8時まで (入場は午後7時30分まで)
    休館日
    毎月第1月曜日(祝日の場合は翌日)
    年末年始(12月29日-1月3日)

    ※上記の休館日以外にも、展示替え等のため展示室が閉室となる場合がございます。
     展覧会スケジュールをご確認のうえご来場ください。
    住所
    〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央3-10-8
    電話 043-221-2311
    料金
    一般1,200円(960円) 大学生700円(560円) 小・中学生、高校生無料
    ※( )内は前売券、および市内在住65歳以上の料金
    展覧会詳細 「生誕100年 清水九兵衞/六兵衞」 詳細情報
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