ジャポニズムにシノワズリ、アール・ヌーヴォーにアール・デコ
これらを紹介しているのは、絵画や建築ではなく…コーヒータイムを彩るデミタスカップ。
《金プラチナ彩菊花文カップ&ソーサ―》 村上和美さんが毎日更新されているFacebookの記念すべき1客
2000点ものデミタスを所蔵する村上和美コレクションから厳選されたカップを味わいに、美術館「えき」KYOTOに足を運んでみました。
「デミタスカップの愉しみ」展 会場
「デミタス」は、フランス語の半分=demiと、カップ=tasseが合わさったもの。濃い目のコーヒーを飲むための小さなカップです。
19世紀にコーヒーの文化が浸透したヨーロッパ。万国博覧会が開催されたことを機に、日本の美術が大ブームに。九谷焼やオールドノリタケも日本から輸出され人気を呼び、欧州でも「写し」が作られるようになりました。
泥漿蜘蛛の巣花葉文 コーヒーセット
19世紀の日本のカップ
佐賀県の有田で生産されている伊万里焼は17世紀末に数多く輸出されます。それらを写したカップがずらり。日本独特の吉祥文様や花鳥が描かれ、色鮮やかです。
伊万里写しのデミタス
デミタスカップは用途によって、素材や形も変わります。
水出しコーヒーやエスプレッソと氷をシェイクするカフェシャケラートを飲むときには、ガラス製のデミタスを。これなら真夏でも涼やかにコーヒーを飲めそうです。
ガラス製のデミタス
ホットチョコレートを飲む時は、背の高いカップ使用します。コーヒーが広まる以前は、貴族や富裕層の間で親しまれていた飲みものです。高台受けが深く、倒れるのを防げるそうです。
機能によって形態の違うデミタス
カップのデザインは変幻自在。草花やフルーツの形をしたものだけでなく、なんとロブスターや貝にも変身します。置くだけでテーブルの主役になる華やかさがあります。
果物や魚介などユニークな形をしたデミタス
飲み終わったあとも楽しむことができるのも魅力の一つです。カップを上から覗くと様々な絵柄が。コーヒーが空になっても、ひきつづき会話が弾みそうです。
上からのぞいても愉しめるデミタス
これだけ集まると、まるでクリスマスのイルミネーションの様です。お気に入りの1点を選びながら鑑賞をしましたが、なかなか決められませんでした。
最後のブースには、村上さんが厳選したカップとそれぞれに寄せるメッセージがあり、1点1点に深い思いを感じました。リモートワークが増えた中で、お気に入りのデミタスカップで、息抜きのコーヒタイムをつくるのも良いかもしれません。
「デミタスカップ」展は、来年に群馬・東京にも巡回予定。また足を運びたくなるほど、盛りだくさんの展示でした。
[ 取材・撮影・文:P. K-KO / 2020年12月7日 ]