開館5周年を迎えた東京・立川のPLAY! MUSEUMで、国立科学博物館(科博)とのコラボレーションによるユニークな展覧会がスタートしました。
科学とアートの両面から動物の魅力に迫り、「私たちは誰か」という根源的な問いを、さまざまなアプローチで投げかけます。

PLAY! MUSEUM 入口
まず注目したいのが、今回初導入となる「ながら聴き」スタイルの音声ガイドです。特定の作品に沿った解説ではなく、動物の鳴き声や詩の朗読、ささやくような声がふと耳に届く仕掛け。
無料で利用でき、空間を自由に歩きながら偶然出会う“音”が、鑑賞体験を豊かに広げてくれます。

「ながら聴き」スタイルの音声ガイド
展覧会は「WHO ARE WE」の章からスタート。科博が所蔵する500万点以上の標本の中から選りすぐった哺乳類などを紹介する巡回展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」(2021年発)をもとに構成されています。
展示台の引き出しを開けると、標本や観察のヒントが現れるなど、来場者の探究心をくすぐる仕掛けが随所に施されています。

「WHO ARE WE」

「WHO ARE WE」
続く「WHERE ARE WE GOING? わたしたちはどこへむかうの?」の章では、PLAY! MUSEUMらしい体験型の展示が展開。前章で見つけた動物の不思議を、アーティストとのコラボレーションによって発展させた5つの作品が並びます。
見る・聞く・触れるといった身体感覚を通じて楽しむ、五感にひらかれた展示です。

「WHERE ARE WE GOING? わたしたちはどこへむかうの?」
中でも特に印象に残るのが、siro Inc.による《しっぽはすごい》。小さなスツールに座って壁に向かうと、背後からしっぽが現れます。
ゾウやビーバーなど、動物たちのしっぽには多様な役割がありますが、人間にはそれがありません。それでも、どこか惹かれてしまう「しっぽ」への憧れを、テクノロジーとデザインでユニークに表現しています。体験後、そのしっぽは持ち帰ることができます。

siro Inc.《しっぽはすごい》
最後の章「UTOPIA」では、人間の創造力にフォーカス。洞窟壁画から空想の動物まで、ヒトは長い歴史の中でさまざまな動物を描いてきました。
このセクションでは、9人のアーティストによる絵画や立体作品、約40点が並び、人間にだけ与えられた「想像する力」の豊かさを体感できます。

「UTOPIA」

「UTOPIA」
PLAY! MUSEUMでは、純粋に“動物”をテーマにした展覧会は今回が初めて。
観察し、想像し、体験する…そのすべてが混ざり合う空間で、動物と人間の関係をあらためて見つめ直すことができる展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2025年4月15日 ]