人間が活動すると必ず生まれる、ゴミとうんち。循環型の社会を考える上で、必ずネックになる存在です。
ゴミやうんちを好きな人はあまりいないと思われますが、「ゴミうんち」という新しい概念をきっかけに、デザインの視点から「世界の循環」に向き合うことで、新しい気付きを促す企画展「ゴミうんち展」が、21_21 DESIGN SIGHTで開催中です。
21_21 DESIGN SIGHT
デザイナーたちが真剣に「ゴミうんち」に向き合い、うまれた考察の数々。冒頭は展覧会のディレクターも務めている佐藤卓の作品です。
オレンジ色のボールが乗った砂時計。時計を進めるためには、人の手でボールを外さなければいけません。一人ひとりが手を動かさなければ、環境問題は進められないというメッセージが込められています。
砂時計の中には、産業廃棄物の焼却後に残ったスラグを砕いたものが入っています。
佐藤卓《TIME - B》
排泄は生き物にとって欠かせない行為ですが、うんちの話は口にしにくいもの。
人間から動物まで見渡して、うんちにまつわるウンチクをまとめた作品は、その名も「うんち句」です。
角尾舞+田上亜希乃《うんち句》
小さい方の展示室であるギャラリー1は「糞驚異の部屋」。15世紀から18世紀のヨーロッパで様々な珍品を集めた陳列室で、現在の博物館の原形といえる「驚異の部屋」にちなみ、身近なものから宇宙までを見渡して、ゴミうんちにまつわるさまざまなものを展示しています。
「糞驚異の部屋」
ものづくりにおいて錆は劣化の象徴ですが、その魅力に気づいたのが狩野佑真。金属板を用いて錆を「育て」ています。
実験を進めるなかで、アクリルに錆の部分だけを転写できることを発見。現在はそれを素材にして、家具や建材に使用しています。
狩野佑真《Rust Harvest │ 錆の収穫》
井原宏蕗の作品の素材は、なんと動物の糞。井原は身近にいる動物の生きる痕跡に興味を持ち、糞そのもので動物の形をつくっています。
糞を乾燥させて、漆で固めて素材として利用。生命活動そのものを形にした作品ともいえます。
井原宏蕗《cycling -do on key-》
苔は樹木や岩だけでなく、コンクリートにも生えるという特性をもち、いわば自然と人工を行き来する存在といえます。
通常、展覧会の会場には生の植物は持ち込めません。会場の各所にある苔のインスタレーション作品は、人工的につくられた境界をあいまいにしていきます。
吉本天地《気配 ― 覆い》
通常、展覧会を行う際には間仕切りになるパネルを使いますが、今回はそのパネルを展示台としても利用。ここでも、ゴミと、そうでないものの境界を考えさせられます。
環境問題や循環型社会について語ると、堅苦しくて野暮ったい表現になりがちですが、いかにも21_21 DESIGN SIGHTらしいスマートな切り口。気軽に見ていただきたい展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年9月26日 ]