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    レポート
    テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ
    国立新美術館 | 東京都
    テート美術館のコレクションから「光」をテーマに厳選した約120点が来日
    18世紀末から現代まで。時代や地域、ジャンルを超えて「光の作品」を俯瞰
    展覧会は世界巡回、日本展のみの限定出品12点。多様な光の表現に包まれて

    英国を代表する国立美術館、テート。テート・ブリテン、テート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの4つの国立美術館で、7万7千点のコレクションを有しています。

    本展は、テートのコレクションから「光」をテーマにした作品を紹介する企画。18世紀末から現代まで、約120点が国立新美術館に並びます。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場入口
    [ENTRANCE] 国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場入口


    展覧会は図録の構成と展示順が異なるので、動線に沿ってご紹介します。第1章は「精神的で崇高な光」。17世紀~18世紀の欧州は、理性と秩序を重んじる啓蒙の時代でしたが、ロマン主義の画家たちはこうした潮流から距離を取り、精神世界への関心を強めていきました。

    ウィリアム・ブレイク(1757–1827)は、ロマン主義の先駆者です。《アダムを裁く神》では、後光が差しているような姿で神を描き、威厳や権威を持たせています。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (左から)ウィリアム・ブレイク《善の天使と悪の天使》1795-1805年頃? / ウィリアム・ブレイク《アダムを裁く神》1795年
    [Room1] (左から)ウィリアム・ブレイク《善の天使と悪の天使》1795-1805年頃? / ウィリアム・ブレイク《アダムを裁く神》1795年


    第2章は「自然の光」。自然の光を絵画で表現するという難しいテーマに多くの画家が挑むなか、「光の画家」と称されるほどこの画題を得意にしたのが、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775–1851)です。

    ターナーが描く光は明確な輪郭線を持たず、周囲の自然に溶け込んでいるのが特徴的です。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (左から)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《陰と闇—大洪水の夕べ》1843年出品 / ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《光と色彩(ゲーテの理論)—大洪水の翌朝—創世記を書くモーセ》1843年出品
    [Room1] (左から)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《陰と闇—大洪水の夕べ》1843年出品 / ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《光と色彩(ゲーテの理論)—大洪水の翌朝—創世記を書くモーセ》1843年出品


    第4章は「光の効果」。科学的な側面から光に関心を抱き、芸術表現を進める美術家たちもいます。

    光が物体にあたり、跳ね返ることで起こる反射。草間彌生(1929-)による《去ってゆく冬》は、鏡面反射を利用した作品で、鑑賞者が丸い開口部を覗き込むと、無限の空間が広がります。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (手前)草間彌生《去ってゆく冬》2005年 Ⓒ YAYOI KUSAMA 第2室
    [Room2] (手前)草間彌生《去ってゆく冬》2005年 Ⓒ YAYOI KUSAMA


    第3章は「室内の光」。19世紀末に都市の近代化が進むと、画家たちは室内というプライベート空間の表現を追及していきます。窓から入る光の効果を作品に取り入れることで、作品に情感を付加していきました。

    ウィリアム・ローゼンスタイン(1872–1945)は《母と子》で、右手からの柔らかな光を用いることで、2人の親密な関係性を示しています。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (左から)ウィリアム・ローゼンスタイン《母と子》1903年 / ヴィヘルム・ハマスホイ《室内》1899年
    [Room3] (左から)ウィリアム・ローゼンスタイン《母と子》1903年 / ヴィヘルム・ハマスホイ《室内》1899年


    第5章は「色と光」。美術と工芸、デザインの総合的な教育を目指したバウハウスでは、幾何学的な形態を用いて、光と色の関係を考察していきました。

    バウハウスに招聘され、後に抽象絵画の先駆者と位置づけられるワシリー・カンディンスキー(1866–1944)も、色同士の関係性が生み出す視覚的効果を探求したひとりです。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (左から)ブリジット・ライリー《ナタラージャ》1993年 Ⓒ Bridget Riley 2023-2024. All rights reserved. / ワシリー・カンディンスキー《スウィング》1925年
    [Room5] (左から)ブリジット・ライリー《ナタラージャ》1993年 Ⓒ Bridget Riley 2023-2024. All rights reserved. / ワシリー・カンディンスキー《スウィング》1925年


    第6章は「光の再構成」。19世紀半ばに電球が発明され、20世紀に入ると一般にも浸透。後に芸術にも利用されるようになっていきます。

    デイヴィッド・バチェラー(1955-)は都市環境における色や光に関心を抱き、色とりどりのライトボックスを積み上げた作品を制作しました。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より (左から)デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトラム 2》 2007年 / デイヴィッド・バチェラー《私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅 8》 2002-07年 ともにⒸ David Batchelor
    [Room6] (左から)デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトラム 2》 2007年 / デイヴィッド・バチェラー《私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅 8》 2002-07年 ともにⒸ David Batchelor


    最後の第7章は「広大な光」。現代の美術家にとっても光は重要なテーマで、注目の作品が登場します。

    気候変動に関心を持って作品に反映させている、オラファー・エリアソン(1967–)。鑑賞者が多面体に反射する光に満たされた空間に身を置く《星くずの素粒子》では、自らの行動が、どのように世界に作用するのかを意識させます。日本初出品の作品です。


    国立新美術館「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」会場より オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》2014年 Ⓒ Olafur Eliasson
    [Room7] オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》2014年 Ⓒ Olafur Eliasson


    美術にとって「光」は普遍的なテーマですが、これだけ幅広い作品が並ぶのはテートならでは。古典的な名作から現代のインスタレーションまで、多様な光の表現に包まれる充実の内容です。

    取材制限の関係でご紹介できませんでしたが、ジェームズ・タレル《レイマー、ブルー》は、ぜひ作品以外のものが視界から消えるまで近寄って、お楽しみください。

    展覧会は中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで開催された世界巡回展。日本が最終会場で、エドワード・バーン=ジョーンズ、マーク・ロスコなどの12点は日本会場のみの限定出品となります。東京展の後に、大阪中之島美術館に巡回します。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年7月11日 ]

    (左から)ジェイコブ・モーア《大洪水》1787年 / ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《陽光の中に立つ天使》1846年出品
    (左から)かつてジョン・マーティンに帰属《パンデモニウムへ入る堕天使 『 失楽園』第1巻より》1841年出品? / ジョン・マーティン《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》1822年、2011年修復
    (左から)エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《愛と巡礼者》1896–97年 / ジョン・ヤング=ハンター《私の妻の庭》1899年
    (左から)クロード・モネ《エプト川のポプラ並木》1891年 / アルフレッド・シスレー《春の小さな草地》1880年
    (左から)スティーヴン・ウィラッツ《ヴィジュアル・フィールド・オートマティック No.1》1964年 Ⓒ Stephen Willats / ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング(726)》1990年 Ⓒ Gerhard Richter 2023
    オラファー・エリアソン《黄色VS紫》2003年 Ⓒ Olafur Eliasson
    会場
    国立新美術館 企画展示室2E[東京・六本木]
    会期
    2023年7月12日(水)〜10月2日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    ※毎週金・土曜日は20:00まで
    ※入場は閉館の30分前まで
    休館日
    毎週火曜日
    住所
    〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://tate2023.exhn.jp/
    料金
    当日券
    一般 2,200 円
    大学生 1,400 円
    高校生 1,000 円
    展覧会詳細 テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ 詳細情報
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