工芸でポケモン? 異色のコラボが実現しました。参加作家は人間国宝から若手まで20名、約70点の作品は全て新作。あのポケモンがこんな姿に! 大人もこどもも楽しめる展覧会が、国立工芸館で始まりました。
国立工芸館「ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―」会場入口
展覧会は2階から1階に進む動線。第1章「すがた ~迫る!~」から始まります。
冒頭からインパクトが強い作品が登場、展覧会のメインビジュアルでもある吉田泰一郎の作品です。イーブイとその進化形であるシャワーズ、サンダース、ブースターが並びます。
金工作家の吉田、作品は銅でつくられています。イーブイは純銅の色艶を活かし、シャワーズは青銅、サンダースは金銀メッキ、ブースターは緋銅という銅の伝統着色が用いられました。
吉田泰一郎 (左奥から)《シャワーズ》2022年 / 《イーブイ》2022年 / 《サンダース》2022年 / 《ブースター》2022年
満田晴穂は、現代における自在置物の第一人者です。自在は、動物をモチーフにした金属の置物で、パーツを動かしてポーズを変えることができるのが特徴です。
満田がつくったのが《自在ギャラドス》。通常はスケッチから採寸、解剖と進みますが、今回は「思いを巡らせ」て、印象と工芸の論理のあいだの「ちょうどいいところを攻めて」いきました。
満田晴穂《自在ギャラドス》2022年
第2章は「ものがたり ~浸る!~」。ポケモンといえば"進化"が欠かせませんが、坪島悠貴は、なんと作品に進化を取り入れています。
坪島の作品は、パーツを動かすと姿かたちが異なるモチーフになる「可変金物」(この名称と機構も坪島による命名です)。ことりポケモンのココガラが、カラスポケモンのアーマーガアに変化します。
坪島悠貴《可変金物ココガラ/アーマーガア》2022年
須藤玲子は染織の作家です。「ポケモンずかん」からモチーフを探し、「すごく可愛い」と選んだのはピカチュウです。
アニメ「ポケットモンスター」の「ピカチュウのもり」から着想し、約900本の"ピカチュウレース"で、光あふれるテキスタイル空間をつくりました。実は1本だけ色柄違いのレースがあるので、ぜひ探してみてください。
須藤玲子《ピカチュウの森》2022年
第3章は「くらし ~愛でる!~」。陶磁の桝本佳子は、この企画を伝えられると、すぐに「ほのおタイプ」をモチーフにすることを決定。確かに、やきものに炎は欠かせません。
展示されているのが、ほのおタイプのリザードンなどをあしらった信楽壺です。鎌倉時代から続く信楽焼の力強さが、「ほのおタイプ」のイメージを際立たせています。
桝本佳子 (左から)《ロコン/信楽壷》2022年 / 《ヒトカゲ/信楽壷》2022年 / 《リザードン/信楽壷》2022年
桂盛仁は「彫金」の重要無形文化財保持者(人間国宝)です。本展では、銅と金の合金である赤銅を用いたブラッキーをつくりました。
金の輪の模様は二重象嵌で、赤銅のボディに楕円形の穴を彫って金を嵌め、さらに穴を開けて赤銅を象嵌しています。
桂盛仁《帯留 ブラッキー「威嚇」「立ち姿」》2022年
今回の試みは、作家にとってイレギュラーな試みと思いますが、ポケモンという魅力的なモチーフを示されたことで、それぞれの創作意欲に火がついたのでしょうか。会場に並んだ作品は、どれも「これ、欲しい!」と思うものばかりでした。
会場は全作品の撮影が可能。オフィシャルショップでは、展覧会限定グッズも多数用意されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年3月20日 ]
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