昭和モダニズムを代表する旧東京中央郵便局舎(KITTE丸の内)にある、インターメディアテク。2013年に開館し、今年で10周年を迎えました。
記念の展覧会は、鳥をモチーフにした宝飾の名品と、鳥の剥製や研究資料をあわせて展示する企画です。知を集積した博物館の空間にジュエリー。異色のコラボレーションが実施中です。
インターメディアテク 2階の入口(今回の特別展は3階で開催中)
特別展の会場は3階。入口はカーテンで仕切られていて、中に進むと、暗い展示室で「夜の鳥」のセクションから始まります。
夜の鳥といえば、フクロウ。手前のケースに浮かび上がるのは、フクロウをモチーフにしたペンダントです。右奥にはフクロウの剥製、江戸時代に描かれた博物図譜の写本も並びます。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
奥に進むと、展示ケースにはジュエリーがずらり。東京大学で戦前から使われてきた什器を再利用し、クラシカルな展示空間を持つインターメディアテクに、貴石や金属の輝きが映えます。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
今回の展覧会は、東京大学総合研究博物館と、ヴァン クリーフ&アーペルが支援する宝飾芸術の教育研究機関「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」とが共同で主催しました。
展示されているのは、日本で初公開となる海外のプライベート・コレクションから、19世紀半ばから現代までの鳥をモチーフにしたジュエリー、約100点です。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
壁面には歴史的な鳥類図譜も展示されています。イギリスのオーデュボン(1785-1851)による『アメリカ産鳥類図譜』(複製)は、1830-1839年に制作されたもの。オーデュボンは18歳で渡米し、自らの足で北米大陸各地を旅行。鳥類を捕獲し、剥製をつくり、制作したこの図譜は、19世紀鳥類図鑑の金字塔とされています。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
大航海時代に異国から西洋にもたらされた鳥は、西洋の人にとって大きな驚きでした。その多様性は、異国趣味「エキゾチシズム」を後押しし、芸術の分野に広がっていきました。
同年代の前衛芸術にも呼応し、鳥のイメージを様式化してジュエリーに展開したのが、ピエール・ステルレ(1905-1978)です。新たな技法も取り込んだステルレの鳥のブローチは、現代的なジュエリーの道を切り拓きました。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場 手前はピエール・ステルレの作品
展覧会のタイトルである「極楽鳥」は、英名で「Birds of Parasise」。日本ではフウチョウと呼ばれる鳥です。
ヨーロッパ人ではじめてオオフウチョウを手にしたとされるのが、世界周航に挑んだマゼラン(1480-1522)です。ヨーロッパに届いた標本は、梱包に邪魔なため脚が切り取られため、伝説上の「天上に住む脚がない鳥」と結び付けられました。
インターメディアテク「開館十周年記念特別展示『極楽鳥』」会場
なんといっても会場とジュエリーの共演が最大の見もの、しかも入館無料です。会場内は撮影もできるので、ぜひ映える写真を撮りにお出かけください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年1月19日 ]