フィンランドを代表するデザイン製品として、世界中の人々を魅了しているイッタラ。イッタラの作品やデザイナーを紹介する、日本で初めてとなる大規模な巡回展がはじまりました。
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「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」会場入口
イッタラは、1881年にフィンランドのイッタラ村でガラス工場として創業。創業期のイッタラは、家庭用のグラスやボトル、薬用品ガラス器を製造していました。第1章「Timeline イッタラ140年の歴史」では、イッタラの140年もの歩みを俯瞰していきます。
イッタラは、伝統の職人技を継承しながら、工場やメーカー企業との合併や統合により陶磁器だけでなく、幅広いインテリア・プロダクト製品を生産していきました。2002年からは、テーブルセッティングやインテリアを提供するブランドとして、今なお発展をしています。
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第1章「Timeline イッタラ140年の歴史」
イッタラでは、フィンランドを代表する多くのデザイナーや建築家、グラフィックデザイナーも活躍をしています。第2章「Designers イッタラとデザイナー」では、イッタラの代表的なプロダクトを生み出した8名のデザイナーを紹介します。
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第2章「Designers イッタラとデザイナー」
「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展でも記憶に新しいアアルト夫妻は、建築だけでなく家具やオブジェなどのプロダクト・デザインも数多く手掛けています。フィンランドの湖からインスピレーションを得た《アルヴァ・アアルト・コレクション》は、イッタラの代表作と言える製品です。
また、フィンランドの伝説的デザイナー、カイ・フランクは、機能的で汎用性に優れた食器を提案。イッタラのカラーガラスの礎をつくった人物とも言われています。
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第2章「Designers イッタラとデザイナー」
会場では、製品を生みだす際の美学や製法、技術など様々な視点から“イッタラの芸術”を感じることができます。 第3章「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」では、13の視点から“イッタラの芸術”を読み解いていきます。
その一つが「職人の技」です。吹きガラスの製法には「宙吹き」と「型吹き」の2つがあり、それに加えイッタラでは改良、開発された様々な技術があります。イッタラ村では代々ガラス職人に受け継がれていますが、現在では大学でもその技術を学ぶ課程が設けられています。
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第3章「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」 職人の技
イッタラと言えば、高い製造技術を誇るカラーガラスについても外せません。 ガラスの色は、素材や鉱物をかけ合わせてつくるため、新色の開発には数年を要します。現在のカラーパレットは200色あり、その中から毎年、約20色が使用されています。
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第3章「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」 カラー
フィンランドのデザインと“自然”は密接な関係と言えます。 例えば、氷から水が滴る様子や氷の上で釣りをする場面で使われる穴をイメージした作品など、デザインのインスピレーションの源として“自然”は、重要なテーマにもなっています。
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第3章「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」 気候と文化
イッタラでは、セット組でデザインされた実用品を多く生み出しています。スタッキング(積み重ねること)が容易で収納にも優れた製品たち。重ねることにも美しさをを感じさせる点は、イッタラのデザインに対する深みを垣間見ることができます。
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第3章「From Nature to Culture イッタラを読み解く13の視点」 連ねる、重ねる
最終章「Iittala and Japan イッタラと日本」では、1950~60年代にかけて日本との関係を深めたイッタラについて紹介します。
カイ・フランクは日本の工芸やデザイン、繊細な美意識に共鳴し、茶道で使われる釜や鉄瓶に影響を受けた製品も残しています。
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第4章「Iittala and Japan イッタラと日本」
近年、積極的に国際的なコラボレーションを行っているイッタラ。イッセイ・ミヤケやミナ ペルホネン、隈研吾など日本のブランドとの交流も行っています。
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隈研吾 イッタラ表参道ストア&カフェのデザイン
最後のスペースにはイッタラの職人技をみることができる、愛らしい《バード》が並んでいます。 アーティストとしての豊かな想像力と多様なガラス製造の技術を駆使して生まれたバードは、1972年から現在までに約500種類にも及びます。
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《バード バイ トイッカ》
日常生活でも目にすることの多いイッタラ製品。改めて、製品を生み出しているデザイナーや技法・技術の視点からイッタラの歴史や美学を知ることで、より身近に感じることができる展覧会になっています。
東京での開催の後、島根、長崎、京都に巡回します。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2022年9月16日 ]