想像力あふれる絵本で知られているヨシタケシンスケを紹介する大規模な展覧会が、世田谷文学館ではじまりました。
会場入口
1973年生まれのヨシタケシンスケは、2013年に『りんごかもしれない』で絵本作家としてデビュー。これまで『もう ぬげない』『あんなに あんなに』『つまんない つまんない』など約20作の絵本を出版し、そのユニークな世界観で人気を集めています。
「ヨシタケシンスケ展かもしれない」会場風景
ヨシタケ氏は、絵本作家としてデビューする以前から小さな手帳に日々浮かぶアイデアや気がついたことなどをスケッチしてきました。その数は10,000枚以上にも及び、その中から厳選された約2000枚もの複製スケッチが壁一面に並んでいます。
会場風景 約2000枚もの複製スケッチ
手のひらに収まるサイズで描かれたスケッチの数々。会社員を経験していた際に、気がつくと思ったことや愚痴などをイラストにして描いていたヨシタケ氏。周りの人に見られないように、すぐに手で隠すことのできるサイズで描いたのが癖になり、今でも小さい絵を描くようになったそうです。
会場風景 約2000枚もの複製スケッチ
はっきりした順路もなく見ることができる会場は、一つの絵本ができるまでの過程も展示しています。
絵本になる前のアイデアスケッチは、まるでヨシタケシンスケ自身の頭の中を覗き見しているようです。
会場風景
幼い頃、家族と訪れた展覧会がつまらなく感じていたと話すヨシタケ氏。美術館ではあまり聞かない驚きの声や笑い声、悲鳴が聞こえるような会場づくりを目指したとのこと。様々な作品や仕掛けで会場の隅々まで楽しませてくれます。
会場風景
学生時代の立体作品やアトリエに並んでいる貴重な私物コレクションも飾られ、ヨシタケ氏が何に影響を受けてどんなものを見ながら創作をしているのかも窺うことができます。
会場風景
プロジェクトチームの中でそれぞれの技術を持ち合わせ、限られた時間や予算のなかでつくりあげる展覧会は、“個人競技”である絵本づくりとは異なり、まるで“団体競技”のようだったとも語ります。
会場風景
日の目を見なかったヨシタケ氏の展示案も多くあり、それらをおさめた図録も必見です。もしかしたらこんな展覧会だったのだろうかと感じることができるかもしれません。
会場風景
ミュージアムショップには絵本やぬいぐるみなど豊富なグッズが並び、思わず手に取りたくなるものばかりです。
ミュージアムショップ
原画サイズが小さく、色をつけることも苦手だったため、絵本の依頼を遠慮していたこともあったというヨシタケ氏。それでも実現できることはあるというメッセージも会場には込められています。
会場を出た頃には、すっかりヨシタケシンスケの虜になっている、かもしれません。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2022年4月8日]
©Shinsuke Yoshitake