名古屋市の北に位置する小牧市。市の中心部近くにある
メナード美術館は、ここ数年は年に5本の展覧会を開催しており、この時期にコレクションの名作を披露するのも定番となりました。
5つの展示室とミニギャラリーを有する同館。早速、順路を追ってご紹介しましょう。
まずは、中庭からの陽光で開放的な展示室1。ここでは美術館の顔といえるマリノ・マリーニ《馬と騎手(街の守護神)》をはじめ、大小の彫刻が展示されています。
奥の展示室2は、西洋絵画 Part1。モネ、ルノワール、ピカソなど、19世紀後半から20世紀半ばの西洋美術が並びます。
本展では2つの作品がコレクションより初公開となります。アンリ=エドモン・クロス《木陰のある浜辺》は新印象派の点描画で、かなり大きな点で描かれているのが特徴的です。
もうひとつのジョルジュ・スーラ《働く農夫》は対照的な小品。1882年頃から、スーラは元はシガーボックスの蓋だった小さな板に油彩画を多く残しました。本作もそうした作品と同サイズの板に、畑仕事を行う農夫が描かれています。
展示室1の彫刻から、展示室2の西洋絵画 Part 1へ3期の最大の目玉である葛飾応為《夜桜美人図》は、展示室3で展示されています。昨年4月にテレビで紹介され、美術館には展示の問い合わせが相次いでいました。
作者は、葛飾北斎の娘である応為(おうい)。天才浮世絵師である北斎も「美人画ではかなわない」と、その才能を認めていました。
本作に見られるような西洋画風の明暗表現は、応為の真骨頂です。灯篭の光に照らされた美人の顔、順光と逆光での桜の描き分け、闇の中に浮かぶ灯篭の脚と、光の作用を強調した表現が印象的です。
さらに注目は、夜空に描かれた星。星(恒星)は表面温度の違いで色の差がありますが、応為は胡粉で白く描いた後に顔料を載せる事で、微妙な星の色を表現しています。光に対する強い思いは、応為ならではといえるでしょうか。
葛飾応為《夜桜美人図》続いて、ミニギャラリーで舟越桂の彫刻、展示室4にレオナール・フジタや佐伯祐三などの日本洋画、展示室5は西洋絵画 Part 2としてシャガール、ミロ、マグリット等々、という会場構成。3期では、計74点が紹介されています。
メナード美術館のコレクションは、特定の作家や画派に偏る事がありません。あえて基準を挙げるなら「作家の個性をぎゅっと凝縮したような作品」。例えばフジタは裸婦、小磯良平は群像、アンソールなら仮面と、その作家を代表するモチーフが多い事も印象的です。
会場を通してみる事で、日本と西洋の美術を網羅的に楽しむ事が可能。美術に詳しい方はもちろん、あまり詳しくない方も、きっと美術の素晴らしさを感じていただけると思います。
2017年10月28日で、ちょうど開館30周年を迎える
メナード美術館。本展の後は、4月26日まで改修工事のため一時休館となります。
名古屋からのアクセスは1時間弱。公式サイトでは乗り換えなしのバスがご紹介されていますが、気候が良ければ電車(地下鉄名城線+上飯田線)も便利。小牧駅からは小牧山方面に徒歩15分程です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年12月27日 ]■メナード美術館コレクション名作展 に関するツイート