尾田栄一郎さんによる大人気漫画作品『ONE PIECE』。1997年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載が始まり、海賊王になることを目指す主人公モンキー・D・ルフィと仲間たちによる冒険物語は、国内外から熱狂的に支持されています。
マンガが生まれてから世界中に広がるまで。そのプロセスに着目したユニークな展覧会「ONE PIECE ONLY」展が、東京・立川市の PLAY! MUSEUMで開催中です。
PLAY! MUSEUM「ONE PIECE ONLY」展 会場入口
会場の入口にある木箱は、展覧会を海外に輸送するためのクレートです。本展は2025年に北米に巡回する予定です。
展覧会の来場者には、木活字で組まれた「ONE PIECE ONLY」から1字を切り出したシールが渡されます。そのシールを木箱の好きな場所に貼り付けて、展覧会の船出を祝おうという趣向です。
海外輸送用クレート
展示室の前から目を奪われるのが、視界のすべてが『ONE PIECE』で覆われる圧巻の展示。『ONE PIECE』の1~109巻に掲載された全1,100話がコミックスから切り離され、高さ3.6mの壁面を埋め尽くすように貼られています。
長さはなんと全長140m。圧倒的な大絵巻で『ONE PIECE』の壮大なストーリーを実感してください。
『ONE PIECE』全1100話を貼り合わせた大絵巻
『ONE PIECE』全1100話を貼り合わせた大絵巻
会場には各所に『ONE PIECE』の秘密と本質に触れる「宝箱」が置かれています。
宝箱に入っているのは、ネームや原画、コミックスのカバー原画、印刷に関わる資料など。
尾田さんが描いた原画が、出版社、印刷所とわたり、ファンの手に届くまで。読者は意識しませんが、実に多くのプロセスを経ていることがわかります。
「宝箱」
「宝箱」
本展を共催している「集英社マンガアートヘリテージ」は、マンガをアートとしてとらえ、それを未来に伝えるプロジェクトです。
会場ではこの活動から生まれたアートプリントも展示。コットン100%の紙にアーカイヴァル・インクジェットプリントを行ったカラー作品や、今では珍しくなった活版平台印刷機によるモノクローム作品などが並びます。
アートプリント
会場の最後は「週刊少年ジャンプ」とジャンプコミックスの印刷現場を撮影した、臨場感あふれる映像インスタレーション。
超高速度カメラでとらえた映像を、3台の8Kプロジェクターで投影。文字通り、世界一のマンガが生まれている現場に没入できます。
映像インスタレーション
本展は充実のグッズにも注目。活版輪転印刷でつくられた名場面ポスターは「週刊少年ジャンプ」と同じ用紙の「きなり(ナチュラル)」「カバ(ピンク)」「ヒワ(グリーン)」で、55種のポスターから1枚が、シルバーの袋にランダムに入っています。
他にもアパレル、ステーショナリーなど盛りだくさん、ファンは目移りしてしまいそうです(グッズの購入にも入場券が必要です)。
多彩なオリジナルグッズ
『ONE PIECE』をテーマにした展覧会ですが、いわゆるマンガの展覧会ではありません。ルフィや仲間たちの解説や、等身大の立体フィギュアなどが並ぶ展覧会とは異なります。
ただ、このボリュームと熱量の大きさは、まさに『ONE PIECE』でしか成立しないことも事実。規格外の展覧会が北米でどう受け入れられるか、楽しみです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年10月8日 ]