毎年、全国で行われている発掘調査は、なんと9,000件超。ただ、地元の方以外は、なかなかその成果を目にする事はありません。
近年発掘され、特に注目された出土品を全国巡回で見せるのが、この展覧会。このコーナーでの紹介も恒例になり、2012年から毎年紹介、これで9回目になります(2012年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年)。
会場入口
今回は新型コロナの影響で開幕が遅れ、6月13日からスタート。冒頭の「新発見考古速報展」は、今年はちょっと少な目で7遺跡です。
大阪府堺市のニサンザイ古墳からは、コウヤマキで作られた蓋(きぬがさ)形木製品、もしくは蓋形の木製立物の一部が出土。埴輪とともに古墳に並べられた木製品(木製立物)で、貴人に差し掛ける木製布張りの傘を模したものです。
ニサンザイ古墳
群馬県高崎市の史跡 上野国多胡郡正倉跡は、郡役所(郡衙)があったとされていた場所。発掘調査の結果、正倉とみられる大型礎石建物群を発見しました。当時としては希少な、総瓦葺であったとみられます。
史跡 上野国多胡郡正倉跡
京都市の愛宕山遺跡からは、数多くの桃山陶器を発見。愛宕山は古来から人々の信仰を集め、多くの人が参拝。身分の高い人々をもてなすために、宿坊に備えられていた器と考えられています。
愛宕山遺跡
特集1は「日本の自然が育んだ多様な地域文化」。旧石器時代から古墳時代を対象に、多様な地域文化を発掘調査の成果から見ていきます。
中央には、多くの人を惹きつける縄文土器。火焔型土器と王冠型土器、縄文の造形美を代表する二大土器が並びます。
吉野屋遺跡の火焔型土器(手前)
旧石器時代は今より気温が低く、東京が今の札幌程度。地域それぞれの環境の中で、性能が高い道具が作られていきました。
男女倉遺跡群
目を引く展示が、縄文人のアクセサリー。千葉県市原市の西広貝塚からは、動物の骨や角、歯、そして貝類の装身具が大量に見つかっています。つくられた装身具は交換されて、各地に送られていきました。
西広貝塚
古墳時代の遺跡からは、各地でさまざまな副葬品が見つかっています。大阪市の長原古墳群は中小規模の古墳群ですが、精巧な埴輪が数多く見つかっています。
長原古墳群
特集2は「記念物100年―我がまちが誇る史跡・名勝・天然記念物―」。史蹟名勝天然記念物保存法の施行から昨年で100年。記念物を「国民の宝」「地域の宝」として捉え、本展でも昨年から来年まで3年間にわたって、特集展示として紹介されます。
特集2「記念物100年―我がまちが誇る史跡・名勝・天然記念物―」
展覧会に連動した地域展、東京会場は「東京府史蹟」です。東京府史蹟は、東京における史跡、名勝地、天然記念物67件を写真入りで解説した書籍で、1919年に東京府が刊行。普及活動として講演会と展覧会も開催されました。
「東京府史蹟」
展覧会は江戸博でスタートして、今年は新潟、福島、愛知、大分と巡回します。会場と会期は、こちらの巡回展コーナーでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年6月25日 ]