このコーナーでのご紹介も5回目になる「発掘された日本列島」展(
2012年、
2013年、
2014年、
2015年)。日本では発掘調査が毎年約8,000件も行われていますが、その調査結果が一般の目に触れる機会もなかなかない事もあり、注目の成果を網羅的に紹介する企画です。
いつも入口近くでは目を引く展示が楽しませてくれますが、今回は巨大な縄文土器のピラミッドが登場。六反田南遺跡(新潟県糸魚川市)から見つかったもので、美しい文様が特徴的です。
六反田南遺跡星ヶ塔黒曜石原産地遺跡(長野県下諏訪町)は、縄文時代に黒曜石が採掘された場所。ここで産出された黒曜石は、東北から東海・北陸まで広範囲で使われた事も分かっています。
展示エリアの近くには、実際に触れる黒曜石も。割ると縁辺が鋭い黒曜石は、世界中で石器の材料として使われています。
星ヶ塔黒曜石原産地遺跡甕の中に入った膨大な銭貨は、中津居館跡(山口県岩国市)で見つかったもの。13~14世紀頃の遺跡で、銭に無造作に入っていた事から、貯蓄のためと思われています。推定4~5万枚、現在の貨幣価値では400~500万円程の「へそくり」だったのでしょうか。
同じく中世の遺跡としては、伏見城跡(京都市)も注目。秀吉が造ったものの早期に地震で倒壊し、幻とされていた初期の伏見城(別名・指月城)について、発掘調査で石垣と堀を発見。城を彩った金箔の瓦も見つかっています。
中津居館跡、伏見城跡いつもと同様に、会場後半には特集展示が。特集1は東日本大震災の被災地である岩手・宮城・福島での発掘調査として、7遺跡が紹介されます。
特集2は過去に起こった災害痕跡と、そこからの復興の歴史に焦点をあてた新企画です。12万年前に現在の宮崎県で起こった姶良カルデラの爆発は、日本列島で起こった最大規模の自然災害。その土地から見つかった石器は、災害を乗り越えた人々の営みを示しています。
人々の逞しさが実感できる遺跡ですが、長い時間軸で考えた時にその復興は正しい判断だったのか、検証の材料としても意義深い試みです。
特集1「復興のための文化力―東日本大震災の復興と埋蔵文化財の保護―」、特集2「復興の歴史を掘る」今回も東京を皮切りに、滋賀、秋田、高知、福岡と全国を巡回。それぞれの会場で「地域展」も開催されます。
各会場とスケジュールはこちらです。[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年6月3日 ]■発掘された日本列島2016 に関するツイート