1995(平成7)年度からはじまった発掘された日本列島展。全国各地で行われている発掘調査の意図と埋蔵文化財保護への理解を目的に文化庁が開催しているものですが、注目の成果を一カ所でまとめて見る事ができるのは、考古ファンにとっても有り難いかぎり。第一回からの累計観覧者数も、200万人を突破しています。
21回目の今回からは協力体制が変わりましたが、基本的には従来どおりの構成。良く見ると今回から、それぞれの調査結果に川柳がつきました。
川柳は「大貝塚 縄文人骨 ザックザク」(富山市の小竹貝塚)などです今年のメインビジュアルに採用されたのが、栃木県下野市の「甲塚古墳」。古墳時代後期の遺跡から、円形に配置された埴輪群が見つかりました。
復元できたのは24個体。うち2個体は、女性が布を織っているいる様子を表したもので、全国で初めて出土した機織形埴輪として極めて重要です。
出土した破片にはわずかに顔料が残っており、彩色を復元したところ、機織りの女性は白い服に赤の水玉。まるで草間彌生さんのようです。
栃木県下野市「甲塚古墳」珍しい文様が付いた縄文時代の土器は、岩手県滝沢市「けや木の平団地遺跡」から見つかったもの。高さ45センチの深い鉢のような土器で、上部中央に女性とみられる人の形が貼り付けられていました。
見つかったのは、祭祀が行われていた場所。生命誕生のシンボルである女性をあしらった土器は、祭祀用の特別な器として使われていたのかもしれません。
岩手県滝沢市「けや木の平団地遺跡」京都市の「大雲院跡」からは、豊臣秀次を弔う供養塔が発見されました。遠目には単なる四角い石のように見えますが、よく見ると「文禄四年/禅昌院殿龍叟道意大居士/七月十五日」と刻まれている方が、豊臣秀吉に切腹させにれた悲運の関白、秀次の供養塔。同じ穴から出土した「逆修/文禄五年/寶林院殿花岳了英大姉/十月十五日」は、秀次の母、または秀次の最初の正室を供養したものと思われます。
その隣は、茨城県牛久市の「シャトーカミヤ旧醸造場施設」。明治時代の旧ワイン醸造場から、全国から集められた煉瓦のほか、1881(明治14)年に発売された未開封ワインも発見。130年間眠っていたワインの味が非常に気になりますが、味は確認していないそうです。
京都市「大雲院跡」と、茨城県牛久市「シャトーカミヤ旧醸造場施設」会場後半には、昨年度ピークを迎えた東日本大震災の復興事業に伴う発掘調査7遺跡も紹介。また今回は、全国史跡整備市町村議会の発足50周年を記念したコーナーも設けられています。
東京展は7/20まで。続いて
富山県埋蔵文化財センター(8/1~9/6)、
栃木県立博物館(9/19~11/1)、
岡山県立博物館(11/13~12/23)、
岩手県立博物館(2016年 1/14~2/28)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月2日 ]