IM
    レポート
    世界遺産 大シルクロード展
    東京富士美術館 | 東京都
    東洋と西洋を結ぶシルクロード。世界遺産に認定後、中国国外初の大規模展
    金銀宝飾品、青銅器、ガラス、陶磁器、壁画、絵画、染織など展示物は多彩
    中国27カ所の主要博物館、研究機関が協力。一級文物45点を含む数々の名宝

    ユーラシア大陸を横断し、東洋と西洋を結んだ大交易路、シルクロード。19世紀後半から研究が進み、2014年に「シルクロード: 長安– 天山回廊の交易路網」として世界遺産に認定されました。

    世界遺産認定後では初めてとなる、中国国外での大規模なシルクロード展が、東京富士美術館から開催。一級文物45点を含むシルクロードの名宝が並びます。


    東京富士美術館入口より
    東京富士美術館入口より


    展覧会は第1章「民族往来の舞台 ~胡人の活動とオアシスの遺宝~」から。「胡」(胡人)は、北方や西方の騎馬遊牧民のことです。

    入口近くの展示ケースには、豪華な2点が鎮座しています。《瑪瑙象嵌杯》は、格子目の中央に象嵌された赤色の瑪瑙、持ち手は虎の造形です。隣の《瑪瑙象嵌壼》も同じ古墓から出土しており、同様に持ち手がある杯だった可能性があります。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より (左から)一級文物《瑪瑙象嵌杯》5-7世紀 イリ州博物館 / 一級文物《瑪瑙象嵌壼》5-7世紀 イリ州博物館
    (左から)一級文物《瑪瑙象嵌杯》5-7世紀 イリ州博物館 / 一級文物《瑪瑙象嵌壼》5-7世紀 イリ州博物館


    マニ教の僧侶に宛てた手紙には、二人の楽人の姿があり、それぞれ縦笛と笙を奏でています。左から右に縦書きで記されているのはソグド文字で、ソグド語はシルクロードの国際共通語でした。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 《マニ教ソクド語の手紙》11世紀初め トルファン博物館
    《マニ教ソクド語の手紙》11世紀初め トルファン博物館


    《唐花文錦鞋》は、つま先が反り返って雲形になっている、華やかな女性用の靴です。つま先が高いのは、長いスカートの裾を引っ掛けて靴先を見せるための意匠です。

    そっくりのデザインのものが、光明皇后ゆかりの品として正倉院にも伝わっています。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 一級文物《唐花文錦鞋》唐・8世紀 新疆ウイグル自治区博物館
    一級文物《唐花文錦鞋》唐・8世紀 新疆ウイグル自治区博物館


    《車馬儀仗隊》は、漢代の墓から出土した銅製の車馬隊です。首を傾けて前足をあげた馬は、今にも駆けだしそうな迫力。墓の主人や夫人の車を、騎馬隊が囲んでいました。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 《車馬儀仗隊》後漢・1-3世紀 甘粛省博物館
    《車馬儀仗隊》後漢・1-3世紀 甘粛省博物館


    豪華な《六花形脚付杯》は、真上から見た形が六花形になっている、脚付きの杯です。外側の面には貴族が馬に乗って狩猟に出かける場面が、線刻で表されています。

    脚付きの器形はシルクロードを通って伝わったもので、中国風の狩猟図との調和が見られます。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 一級文物《六花形脚付杯》唐・8世紀 山西博物院
    一級文物《六花形脚付杯》唐・8世紀 山西博物院


    顔をわずかに左に傾け、右手を膝の上に伏せて蓮華座上に座るのは《菩薩座像》です。腰を極端に絞り込んだプロポーションが印象的で、写実と理想が融合した表現です。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 一級文物《菩薩座像》唐・7-8世紀 龍門石窟研究院
    一級文物《菩薩座像》唐・7-8世紀 龍門石窟研究院


    4つの面すべてに彫刻がある《四面造像碑》。正面は釈迦が愛馬と別れる「愛馬別離図」で、他の面も仏教説話などが表現されています。内容は詳細、かつ彫刻も優れています。


    東京富士美術館「世界遺産 大シルクロード展」会場より 《四面造像碑》東魏・6世紀 洛陽博物館
    《四面造像碑》東魏・6世紀 洛陽博物館


    展覧会には洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域など中国27カ所の主要博物館、研究機関が協力。日本初公開の文物を含むシルクロード文化の精華が揃いました。

    東京富士美術館を皮切りに、展覧会は全国を巡回します。会場と会期はこちらです

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年9月15日 ]

    (右手前)一級文物《男子跪坐像》前5~3世紀 新疆ウイグル自治区博物館
    一級文物《鳳首杯》唐・8世紀 陝西歴史博物館
    《女子俑》唐・8世紀 陝西歴史博物館
    《駱駝》唐・8世紀 洛陽博物館
    会場
    東京富士美術館
    会期
    2023年9月16日(土)〜12月10日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(受付は30分前まで)
    休館日
    月曜(9/18と10/9は開館)、9/19(火)、10/10(火)
    住所
    〒192-0016 東京都八王子市谷野町492-1
    電話 042-691-4511
    公式サイト https://www.fujibi.or.jp/
    料金
    大人: 1500円(1200円)
    大学・高校生: 900 円(800 円)  
    中学・小学生: 500 円(400 円)
    ※未就学児無料、( )内は前売及び団体料金、各種割引
    展覧会詳細 「世界遺産 大シルクロード展」 詳細情報
    このレポートに関連する巡回展
    《瑪瑙象嵌金製杯》6–8世紀 1997年イリ市昭蘇県ボマ古墓出土 一級文物 高16.0cm イリ州博物館
    東京都
    2023年9月16日(土)〜12月10日(日) 東京富士美術館
    福岡県
    2024年1月2日(火)〜3月24日(日) 福岡アジア美術館
    宮城県
    2024年4月9日(火)〜6月9日(日) 東北歴史博物館
    愛媛県
    2024年6月22日(土)〜9月1日(日) 愛媛県美術館
    岡山県
    2024年9月16日(月)〜11月10日(日) 岡山県立美術館
    京都府
    2024年11月23日(土)〜2025年2月2日(日) 京都文化博物館
    開催中[あと42日]
    展覧会の詳細はこちら
    このレポートに関連する特集
    印象派の巨匠・クロード・モネの作品60点以上が並ぶ展覧会や、モードの帝王・イヴ・サンローランの大回顧展、横尾忠則の最大のシリーズとなる102作品が展示される展覧会など。2023年秋に首都圏で開催される、おすすめの展覧会を厳選してご紹介。
    おすすめレポート
    学芸員募集
    荻窪三庭園 施設管理運営スタッフ募集! [荻窪三庭園]
    東京都
    刀剣博物館 経理職員募集 [刀剣博物館]
    東京都
    学芸員補佐(アルバイト)募集のお知らせ [中村キース・ヘリング美術館]
    山梨県
    学芸員(契約社員)募集のお知らせ [中村キース・ヘリング美術館]
    山梨県
    横浜みなと博物館ミュージアムショップ アルバイト募集!(増員のため募集期間延長) [帆船日本丸・横浜みなと博物館]
    神奈川県
    展覧会ランキング
    1
    国立西洋美術館 | 東京都
    モネ 睡蓮のとき
    開催中[あと51日]
    2024年10月5日(土)〜2025年2月11日(火)
    2
    麻布台ヒルズ ギャラリー | 東京都
    ポケモン×工芸展 ― 美とわざの大発見 ―
    開催中[あと42日]
    2024年11月1日(金)〜2025年2月2日(日)
    3
    米子市美術館 | 鳥取県
    MINIATURE LIFE展2 田中達也 見立ての世界
    開催まであと48日
    2025年2月8日(土)〜3月24日(月)
    4
    京都文化博物館 | 京都府
    世界遺産 大シルクロード展
    開催中[あと42日]
    2024年11月23日(土)〜2025年2月2日(日)
    5
    日本科学未来館 | 東京都
    特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」
    開催中[あと44日]
    2024年11月6日(水)〜2025年2月4日(火)