ユーラシア大陸を横断し、東洋と西洋を結んだ大交易路、シルクロード。19世紀後半から研究が進み、2014年に「シルクロード: 長安– 天山回廊の交易路網」として世界遺産に認定されました。
世界遺産認定後では初めてとなる、中国国外での大規模なシルクロード展が、東京富士美術館から開催。一級文物45点を含むシルクロードの名宝が並びます。
東京富士美術館入口より
展覧会は第1章「民族往来の舞台 ~胡人の活動とオアシスの遺宝~」から。「胡」(胡人)は、北方や西方の騎馬遊牧民のことです。
入口近くの展示ケースには、豪華な2点が鎮座しています。《瑪瑙象嵌杯》は、格子目の中央に象嵌された赤色の瑪瑙、持ち手は虎の造形です。隣の《瑪瑙象嵌壼》も同じ古墓から出土しており、同様に持ち手がある杯だった可能性があります。
(左から)一級文物《瑪瑙象嵌杯》5-7世紀 イリ州博物館 / 一級文物《瑪瑙象嵌壼》5-7世紀 イリ州博物館
マニ教の僧侶に宛てた手紙には、二人の楽人の姿があり、それぞれ縦笛と笙を奏でています。左から右に縦書きで記されているのはソグド文字で、ソグド語はシルクロードの国際共通語でした。
《マニ教ソクド語の手紙》11世紀初め トルファン博物館
《唐花文錦鞋》は、つま先が反り返って雲形になっている、華やかな女性用の靴です。つま先が高いのは、長いスカートの裾を引っ掛けて靴先を見せるための意匠です。
そっくりのデザインのものが、光明皇后ゆかりの品として正倉院にも伝わっています。
一級文物《唐花文錦鞋》唐・8世紀 新疆ウイグル自治区博物館
《車馬儀仗隊》は、漢代の墓から出土した銅製の車馬隊です。首を傾けて前足をあげた馬は、今にも駆けだしそうな迫力。墓の主人や夫人の車を、騎馬隊が囲んでいました。
《車馬儀仗隊》後漢・1-3世紀 甘粛省博物館
豪華な《六花形脚付杯》は、真上から見た形が六花形になっている、脚付きの杯です。外側の面には貴族が馬に乗って狩猟に出かける場面が、線刻で表されています。
脚付きの器形はシルクロードを通って伝わったもので、中国風の狩猟図との調和が見られます。
一級文物《六花形脚付杯》唐・8世紀 山西博物院
顔をわずかに左に傾け、右手を膝の上に伏せて蓮華座上に座るのは《菩薩座像》です。腰を極端に絞り込んだプロポーションが印象的で、写実と理想が融合した表現です。
一級文物《菩薩座像》唐・7-8世紀 龍門石窟研究院
4つの面すべてに彫刻がある《四面造像碑》。正面は釈迦が愛馬と別れる「愛馬別離図」で、他の面も仏教説話などが表現されています。内容は詳細、かつ彫刻も優れています。
《四面造像碑》東魏・6世紀 洛陽博物館
展覧会には洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域など中国27カ所の主要博物館、研究機関が協力。日本初公開の文物を含むシルクロード文化の精華が揃いました。
東京富士美術館を皮切りに、展覧会は全国を巡回します。会場と会期はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2023年9月15日 ]