空想と現実を行き交う自由な発想とタッチで、作品制作のみならず絵本の刊行など幅広く活躍している、ヒグチユウコ。 2019年に世田谷文学館でスタートした「ヒグチユウコ展 CIRCUS」が、「FINAL END」として2度目となる東京展がはじまりました。
森アーツセンターギャラリー 周辺
「ヒグチユウコ展 CIRCUS」は、これまで東京、神戸、広島、静岡、高知、愛知、福岡、長野、岡山の9ヵ所を巡回。巡回時に紹介した作品と新作も加わり、約1,500点もの作品が会場を彩ります。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
黒い通路を抜けると現れるのは、サーカスを模した空間。ヒグチユウコが背景を担当した「カカオカー・レーシング」(2017年、グラフィック社、今井昌代著)の立体展示は圧巻です。中を覗くと、絵本に登場するいきものたちのぬいぐるみが、らせん状に配置されています。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
壁面にも作品が所狭しと飾られています。生き物や少女、キノコなど、可愛らしくもどこか不思議なヒグチユウコの世界観を十分に浴びることのできる空間です。
これまでの9会場で、会場ごとに描き下ろされたメインビジュアルの展示や、本展のための描き下ろしの大作《終幕》(2022年)も並んでいます。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景 (中央)《終幕》(2022年)
「和」をテーマとした緑色の和室空間では、風神雷神に扮した猫を描いた《猫風神雷神図》や《GUSTAVE若冲雄鶏図》の座布団や掛け軸など細部までこだわりが感じられます。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
続いての部屋では、一列に並んだトルソーが登場。花柄のランプを頭とした、大小異なる身体には、草木や猫、ウサギ、中には心臓が描かれたものもあります。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
可愛いだけでなく、どこか不穏で怖いイメージを感じさせるヒグチユウコの作品。ヒッチコックの「めまい」や「IT」「ミッドサマー」をはじめとするホラー映画のポスターや原画には、ヒグチユウコならではのミステリアスな雰囲気を感じることができます。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
ファッションブランドや化粧品、飲食店などと様々なクリエイションも展開しているヒグチユウコ。
GUCCIとは、今回の展覧会の開催を祝して日本限定のカプセルコレクションを販売。猫や空想の世界の動物たちと、グッチの象徴的なモチーフとのクリエイションが実現しています。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
巨大なショーケースにはイラストや4コマ漫画、図録や展覧会チケットが並んでいます。クロッキーブックやマスキングテープなど、ホルベインともクリエイションを行っていたヒグチユウコ。2023年のアイテム、透明水彩絵具108色セットや水彩紙ブックも展示されています。
鑑賞の満足感だけでなく、制作意欲も搔き立てられた方は、ホルベインとのグッズの一部を、展覧会ショップで購入することも可能です。
「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」会場風景
一度では見切れないほどの作品数が並んでいる本展覧会。会場と同じフロアの「THE SUN & THE MOON〈Cafe〉」では、ヒグチユウコの世界観で彩られた店内でスペシャルメニューをお楽しみいただけます。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年2月2日 ]