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    レポート
    マリー・ローランサンとモード
    Bunkamura ザ・ミュージアム | 東京都
    4月から長期休館となるBunkamura最後の展覧会は、1920年代のパリ芸術界を紹介
    美術とファッション界をけん引した、マリー・ローランサンとココ・シャネルら
    現代のオートクチュールにも影響を与えた、ローランサンの透明感のある色使い

    2つの世界大戦に挟まれ、様々な才能がジャンルを超えて交差した1920年代のパリで活躍した2人の女性。ともに1883年に生まれた、マリー・ローランサンとココ(ガブリエル)・シャネルです。2人の活躍やその周囲を彩った人々を紹介する展覧会が、Bunkamura ザ・ミュージアムではじまりました。


    Bunkamura ザ・ミュージアム 「マリー・ローランサンとモード」会場入口
    Bunkamura ザ・ミュージアム 「マリー・ローランサンとモード」会場入口


    女性的な美を追求し絵画作品に反映したローランサンに対し、男性ファッションやスポーツウェアを取り入れた新たな女性のファッションを提示したシャネル。会場では、対照的な2人の活躍とともに、モダンとクラシックが融合したパリの芸術界を4つの章立てで紹介していきます。

    第1章は「狂騒の時代のパリ」。第一次大戦を経て、人々は平和を享受し生きる喜びを謳歌します。パステルカラーで優美な女性たちの姿を描いたローランサンは、社交界の中心人物だったグールゴー男爵夫人の肖像画が好評を呼び、上流階級の婦人たちの間で人気画家として駆け上がります。


    第1章 「狂騒の時代のパリ」 (中央)マリー・ローランサン 《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》 パリ、1923年頃 ポンピドゥー・センター
    第1章 「狂騒の時代のパリ」 (中央)マリー・ローランサン 《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》 1923年頃 パリ、ポンピドゥー・センター


    第2章は「越境するアート」。1920年代当時、スペインからはピカソ、アメリカからはマン・レイなど、世界中から多くの若者が“越境”してパリに集まり、その才能を開花させていきました。

    また、美術、音楽、文学、そしてファッションなど、これまで別々の発展を遂げてきた表現が、垣根を超えて新たな総合的芸術を生み出していきます。代表的なもののひとつに、フランスを中心に活躍したロシア・バレエ団「バレエ・リュス」が挙げられます。

    ローランサンはバレエ・リュスとの関係をきっかけに、舞踏をテーマとした油彩画の制作や衣装、舞台美術も手掛けていきます。


    第2章 「越境するアート」
    第2章 「越境するアート」


    1925年にパリで開催された「アール・デコ博」では、装飾家アンドレ・グルーが手掛けた室内装飾にローランサンの作品が提供されたことが、大きな話題となります。 また、アンドレの妻でもありファッション界の帝王ポール・ポワレの妹、ニコル・グルーとは生涯にわたる親交を深めます。


    第2章 「越境するアート」 (右)マリー・ローランサン 《鳩と女たち(マリー・ローランサンとニコル・グルー)》 1919年 ポンピドゥー・センター所蔵、パリ装飾美術館に寄託
    第2章 「越境するアート」 (右)マリー・ローランサン 《鳩と女たち(マリー・ローランサンとニコル・グルー)》 1919年 ポンピドゥー・センター所蔵、パリ装飾美術館に寄託


    第3章は「モダンガールの変遷」。1910年代にポール・ポワレによって提案されたコルセットから解放されたエキゾチックなスタイルは、その後シャネルによる実用的な服装へと進みます。 帽子デザイナーとしてキャリアをスタートしたシャネルにより、過剰な装飾は取り払われ、リトル・ブラック・ドレスは時代を代表するスタイルになりました。

    ローランサンが描いたファッショナブルな人物たちにも帽子は重要なアイテムとして繰り返し描かれるようになります。


    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」


    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」


    1930年になると、ロングドレスや装飾が復活します。スカート丈は長く、女性的な曲線が好まれ、花柄などのモチーフが多く見られるようになります。 ファッションの動向に呼応するように、ローランサンの作品にも、これまで用いられなかった鮮やかな色彩が見られるようになります。


    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」


    エピローグは「ローランサンの色彩」。ニコル・グルーと二人の娘を描いた作品や、ローランサンから着想を得たカール・ラガーフェルドによるドレスが並んでいます。

    カール・ラガーフェルドは、1983年から30年以上にわたりシャネルのデザイナーを務めました。ローランサンが用いたピンクや淡いグレーなどの色使いからインスピレーションを受けてつくられた、2011年の春夏オートクチュール・コレクションは、ローランサンの世界観を再現しているかのようです。


    マリー・ローランサン 《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 1922年 マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin
    マリー・ローランサン 《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 1922年 マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin


    Bunkamuraが長期休館前の最後となる本展覧会。鑑賞後には隣接するカフェ「ドゥ マゴ パリ」で、ローランサンの絵画に合わせた優しい色合いのお菓子やドリンクもお楽しみいただけます。

    展覧会は東京での開催後、4月に京都へ巡回します。

    [ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2023年2月13日 ]

    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」
    第3章「モダンガールの変遷」
    会場
    Bunkamura ザ・ミュージアム
    会期
    2023年2月14日(火)〜4月9日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00-18:00(入館は17:30まで)
    毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
    ※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更になる場合がございます。
    休館日
    ※3月7日(火)休館
    住所
    〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
    電話 050-5541-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_laurencin/
    料金
    一般:1,900円
    大学・高校生:1,000円
    中・小学生:700円
    展覧会詳細 「マリー・ローランサンとモード」 詳細情報
    このレポートに関連する巡回展
    マリー・ローランサンとモード
    東京都
    2023年2月14日(火)〜4月9日(日) Bunkamura ザ・ミュージアム
    京都府
    2023年4月16日(日)〜6月11日(日) 京都市京セラ美術館
    愛知県
    2023年6月24日(土)〜9月3日(日) 名古屋市美術館
    このレポートに関連する特集
    大注目は都美「エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」。ファッション好きには現美「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」、Bunkamura「マリー・ローランサンとモード」。三菱一号館の「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」展も楽しみです。
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