2020年11月6日(金)にグランドオープンした「ところざわサクラタウン」。ランドマークといえる施設が角川武蔵野ミュージアムです。アート、文学、博物のジャンルを超え、あらゆる知を再編成したユニークなミュージアムをご紹介しましょう。

巨大な石の塊のように見える特徴的な建物は、隈研吾による設計。外壁には鴻池朋子《武蔵野皮トンビ》が1月に設置されました。
建物は5階建てですが、エントランスは2階になります。このフロアにはチケットカウンターの他、所沢名産のサツマイモを使ったスイーツなどを提供する「角カフェ」や、オリジナルグッズを取り扱う「ロックミュージアムショップ」など。各所に点在するアート作品も見逃せません。

(左)奈良美智《PEACE HEAD》 / (右)会田誠《疫病退散アマビヱ之図》
4階のエディットタウンは、巨大な図書空間です。約2.5万冊の本は「記憶の森へ」「世界歴史文化集」「むつかしい本たち」「脳と心とメディア」「日本の正体」「男と女のあいだ」「イメージがいっぱい」「仕事も暮らしも」「個性で勝負する」という“9つの文脈”で並んでいます。本はフロア内なら、どこでも閲覧が可能です。

エディットタウン
奥に進むとミュージアムの目玉といえる「本棚劇場」。高さ約8メートルという巨大本棚にかこまれた空間は、昨年の紅白歌合戦でのYOASOBIの熱唱も話題になりました。
本棚空間は5階まで続いており、定期的に「本と遊び、本と交わる」をコンセプトとしたプロジェクションマッピングも上映されます。

本棚劇場
4階には展示空間「エディット アンド アートギャラリー」も設置。開館記念の展覧会は「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」です(5/31まで)。
米谷健+ジュリアは、ベネチア・ビエンナーレのオーストラリア代表に選ばれるなど、国際的に活躍中の日本人とオーストラリア人によるアーティストユニット。環境問題や社会問題を主題にした作品は注目を集めており、今回が国内のミュージアムでは初めての大型個展となります。

「《米谷健+ジュリア展》 だから私は救われたい」
同じく4階には、常設の「荒俣ワンダー秘宝館」も。荒俣宏監修による2つの展示室に分かれており、入って左手の「サイエンスアートの部屋(生命の神殿)」には美しい生物の標本が。右手の「ワンダーの部屋(半信半疑の地獄)」には世界中から集めた珍品、標本、宝物、模型が並びます。

荒俣ワンダー秘宝館
1階に下りると、グランドギャラリーでは「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020 YOKAI PANDEMONIUM」が開催中です(3/31まで)。こちらも荒俣宏が監修し、新進気鋭のイラストレーターが描く妖怪絵図や、妖怪のイメージが具象化されたミイラなど、日本各地に潜む多種多様な妖怪が紹介されています。
烏天狗のミイラ、明治大正期の珍品収集家・三田平凡寺のコレクションなど、ユニークな展示物が並びますが、甘く見ていると意外と怖いところも。小心者は要注意です。

「荒俣宏の妖怪伏魔殿2020 YOKAI PANDEMONIUM」
同じく1階の「マンガ・ラノベ図書館」は、KADOKAWAグループのほぼすべてのライトノベルが揃っている図書館です。中二階も含めて各所にベンチが設けられ、KADOKAWAが発信する「ラノベ・マンガ」の世界観をゆっくり楽しむことができます。奥には子ども向けのスペースも用意されています。

マンガ・ラノベ図書館
5階の「武蔵野ギャラリー」は「武蔵野三万年ことはじめ」展(10/31まで)。雑誌『武蔵野樹林vol.5』の特集との連動企画で、民俗学者・柳田国男と角川書店創業者・角川源義がどのように武蔵野を捉えていたのか考察します。武蔵野に伝承が数多く残る巨人「ダイダラボッチ」の巨大絵のほか、武蔵野の地形図の上にARでダイダラボッチが出現する楽しい展示もあります。

武蔵野ギャラリー「武蔵野三万年ことはじめ」
他にも、ところざわサクラタウンには隈研吾が設計した「武蔵野坐令和神社」、すべての客室がアニメやコミックなどの世界観とコラボした「EJアニメホテル」など、見どころがいっぱい。隣接する東所沢公園にも、チームラボによる光のアート空間「どんぐりの森の呼応する生命」が展開されています。
ショップやレストランも充実していますので、1日たっぷりお楽しみいただけると思います。

美しい夜景も注目です
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2021年1月19日 ]