ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858年-99年)は、アルプスの山々に魅せられその風景を描いた画家として知られています。故郷イタリアで活動した初期には、フランスの画家ミレー譲りのスタイルで農民生活などを題材としました。その後、スイスアルプスに魅せられ、澄んだ光の、より高い山地に転居しながら、雄大なアルプスを舞台にした作品に取り組みます。次代の前衛美術に影響をあたえた新印象派風の明るく細かいタッチの色彩技法もこのころ確立しました。さらに晩年には、母性・生・死などのテーマで象徴主義の代表作家となります。セガンティーニの描く明るく清澄な空気と素朴で美しい自然、またそのなかに住む実直な人々や動物たちは、見る人の心を清々しい気持ちにさせてくれます。
本展は、ミラノでの初期の古典主義的な画風から、独特の分割技法を確立し、さらには象徴主義へと移行していった画家の全貌を紹介するもので、日本でまとまったかたちで紹介されることがほとんどなく回顧展が行われたのは33年も前のことです。そして彼の41年という短い生涯で残された作品は非常に少ないなか、約60点を展覧するとても希少なものです。是非、この機会にお楽しみください。