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    レポート
    ターナー展
    東京都美術館 | 東京都
    10代から晩年まで、充実の大規模展
    英国絵画史上最高の画家と称えられるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)。世界最大のターナーコレクションを誇るテート美術館から計約110点の秀作が来日しました。
    《チャイルド・ハロルドの巡礼 ─ イタリア》1832年発表
    《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨》1798年発表
    《鉄の値段と肉屋の小馬の装蹄料を巡って言い争う田舎の鍛冶屋》1807年発表
    《スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船》1808年発表(右)
    《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》1820年発表
    《「イースト・カウズ城、係留地に向かうレガッタ」のためのスケッチ、No.3》1827年(左)
    ターナー愛用の金属製絵具箱
    第7章「ヨーロッパ大陸への旅行」
    第10章「晩年の作品」
    後の印象派画家に影響を与えたともされているターナーは、一方で弱冠26歳でロイヤル・アカデミーの正会員になった‘体制派’の人物。一面だけでは判断しきれません。

    10代の習作から晩年の作品までを紹介する、日本では久しぶりの大型ターナー展。ターナーの全てを展観する、またとない機会となりました。


    会場入口から

    展覧会は10章構成。大型の作品も多いため、かなり見応えがあります。

    《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に》も、横幅が3mを超える大作。テムズ川の田園風景を描いた作品です。

    ターナーは30歳の時にロンドン中心部を離れたテムズ河畔に家を借り、何度もテムズ川を探索。自然表現の腕を磨いていきました。


    第3章「戦時下の牧歌的風景」と、《イングランド:リッチモンド・ヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に》1819年発表

    ターナーは44歳で初めてイタリアを訪問。つぶさにスケッチした古代の史跡や美しい風景は、その後のターナーにとって大きな財産となりました。

    《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》は、初めてのイタリア旅行からの帰国後、すぐに描かれた作品です。

    画面中央右側には、自作を確かめているラファエロの姿が。ラファエロの後を継ぐのはターナー自身であることも、世間に示そうとしました。


    《ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のための絵を準備するラファエロ》1820年発表

    日本では、夏目漱石の小説「坊ちゃん」でターナーの名を知った方も多いと思います。“赤シャツ”が「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と言うシーンです。

    漱石は英国留学中にターナーの作品に出合い、強い印象を受けました。漱石が見たと思われる「真直な松のターナーの絵」は確定していませんが、こちらの《チャイルド・ハロルドの巡礼 ─ イタリア》も有力候補のひとつです。


    《チャイルド・ハロルドの巡礼 ─ イタリア》1832年発表

    画家としてのターナーを考える上で、興味深かったのは6章「色彩と雰囲気をめぐる実験」。ターナーが遺した作品の中に含まれていた、水彩で描いた習作集です。

    今日では「カラー・ビギニング(色彩のはじまり)」の名で呼ばれていますが、そもそも人に見せるつもりではなかったもの。ターナーは自らの制作方法について多くを語りませんでしたが、この習作を見ると色、明暗、構図など、さまざまな研究を重ねていたことが分かります。

    同じコーナーにはターナーの絵具箱も。絵具箱の中に残った唯一のチューブは、ターナーが好んでいたというクローム・イエローでした。


    6章「色彩と雰囲気をめぐる実験」

    著名画家の名前を冠した「○○展」は、その周辺の作品も含めて構成される事も多い中で、文字通り、ターナーの作品ばかりを集めた大規模展。得意の海を題材にした作品や、晩年の抽象画風の作品など、本稿では紹介しきれなかった作品もたっぷりです。この先は、会場でお楽しみください。

    ※作品はすべてテート美術館蔵(©Tate 2013-2014)

    なお本展は2014年1月11日(土)~4月6日(日)、神戸市立博物館に巡回します。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月7日 ]

    美術手帖 2013年 11月号増刊 ターナー 英国風景画の巨匠、その全貌に迫る

    コロナ・ブックス編集部 (編集) 美術手帖編集部 (編集)

    美術出版社
    ¥ 1,500

    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2013年10月8日(火)~12月18日(水)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:30
    休館日
    月曜日休館 ただし10月14日(月祝)、11月4日(月休)、12月16日(月)は開館、10月15日(火)、11月5日(火)は休館
    住所
    東京都台東区上野公園8-36
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.turner2013-14.jp/
    料金
    一般 1,600(1,300)円/学生 1,300(1,100)円/高校生 800(600)円/65歳以上 1,000(800)円
    ※()内は20名以上の団体および前売料金
    ※障害者手帳等お持ちの方、およびその付添の方1名は無料。
    ※詳細は公式サイトをご確認ください。
    展覧会詳細 ターナー展 詳細情報
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