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    レポート
    スカジャン展
    横須賀美術館 | 神奈川県
    日本に滞在した米兵向けの土産物として誕生した、豪華な刺繍のジャケット
    大ヒットしたスーベニアジャケットが、日本に里帰りして「スカジャン」に
    世界のファッションシーンから注目を集めるスカジャン、その魅力が一堂に

    光沢がある生地に派手な刺繍が施された、スカジャン。もとは米兵向けの土産物でしたが、現在では「スカジャン」の呼称も含めてファッションアイテムになり、世界中のファッションシーンからも注目を集めています。

    貴重なヴィンテージ・コレクションを中心に、スカジャンの魅力あふれる世界を紹介する展覧会が、スカジャン誕生の地、横須賀美術館で開催中です。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 横須賀美術館「スカジャン展」会場入口
    横須賀美術館「スカジャン展」会場入口


    展覧会は、第1章「SOUVENIR OF JAPAN」から。終戦直後の日本。多くの人が懸命に生きるすべを探す中、米軍基地が置かれた横須賀では、米兵を対象にした商売が盛んになっていきます。

    「ドブ板通り」の周辺には、米兵を対象にした土産物店が、数多く出店。SOUVENIRは土産物を意味しますが、八百屋、魚屋のように、店自体が「スーベニヤ(屋)」と呼ばれました。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第1章「SOUVENIR OF JAPAN」会場風景 手前は米兵の似顔絵を描いたスカーフ
    第1章「SOUVENIR OF JAPAN」会場風景 手前は米兵の似顔絵を描いたスカーフ


    戦後しばらくすると、米兵の習慣や趣味趣向、そしてアメリカ本国のスーベニア事情などの理解が進み、日本やオリエンタルな意匠が数多く見られるようになります。

    クッションカバーは、その一例です。駐留している場所の名物などが描かれたクッションカバーを、米兵が母親などに送る、というのが定番。富士や虎などの柄は、後のスカジャンでもしばしば見られます。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第1章「SOUVENIR OF JAPAN」会場風景
    第1章「SOUVENIR OF JAPAN」会場風景


    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」は圧巻。スカジャンがずらりと並びます。

    戦後、米兵向けに数々の商品が生み出されるなかで、アメリカ人に親しみやすいベースボールジャケットを模したものに、和装由来のオリエンタルな意匠の刺繍を施した「スーベニアジャケット」が大ヒット。ここからスカジャンの歴史が始まりました。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」


    ここでは、テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)が所蔵するヴィンテージ・スカジャンが、龍・鷲・虎などのモチーフごとに紹介されています。

    まずは「龍」。東洋で神聖化されている架空の生物・龍は、中国では皇帝の象徴。転じて、権力や力強さを表すモチーフでもあります。欧米人がイメージするオリエンタルなシンボルの代表といえます。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 龍
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 龍


    続いて「鷲」。数ある絵柄の中でも、最も米兵に好まれたモチーフです。米国の国鳥がハクトウワシという事もあり、米国では古くから記章などに鷲が使われていました。

    日本でも古くから日本画の画題になっており、鋭いくちばし、鉤爪、大きな翼は、強さと権威を象徴しています。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 鷲
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 鷲


    「虎」は、アジアならではの猛獣。自然界の頂点に君臨する虎は、強者や強者や英雄、そして権力の象徴とされています。

    スカジャンの刺繍は、針が左右に動く特殊なミシンを使用したく「横振り刺繍」の技法を使うため、虎の毛並みや縞模様の表現が際立ちます。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 虎
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 虎


    意外に思えたのが、ハワイのフラガールやアラスカのシロクマなど、海外のモチーフが入ったスカジャン。これらも日本で生産されたものです。

    日本でスカジャンが爆発的にヒットしたことから、世界各国にある米軍基地で、その地のシンボルを入れたスカジャンが求められました。日本の職人が見たこともないアラスカのヘラジカは、写真を見て刺繍されました。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 海外の図案
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 海外の図案


    第3章は「スカジャンの現在」。アメリカ人の心を掴んだスーベニアジャケットは、その後、日本人のアメリカンカジュアルへの憧れもあって、日本に里帰り。戦後からスーベニアジャケットを売り続けていた、横須賀「ドブ板通り」のイメージと結び付き、「横須賀ジャンパー」、略して「スカジャン」として、ファッションアイテムになりました。

    スカジャンは現在でも世界中のファッションシーンから注目を集めてあり、ここではChrome HeartsやDIORなどによる、近年のスカジャンが展示されています。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第3章「スカジャンの現在」 (手前)DIOR PRE-FALL 2019 MEN'S COLLECTION より《DIOR x 空山基 ボンバージャケット》DIOR 2019年 空山基氏蔵
    第3章「スカジャンの現在」 (手前)DIOR PRE-FALL 2019 MEN'S COLLECTION より《DIOR x 空山基 ボンバージャケット》DIOR 2019年 空山基氏蔵


    展覧会の最後には、ヴィンテージ・スカジャンに用いられている「横振り刺繍」を用いて制作を行っている作家も紹介。

    横振り刺繍の第一人者で「現代の名工」にも挙げられている大澤紀代美をはじめ、nico’s DOLL STUDIO、田沼千春、OZAKI FUMINAの作品が会場を彩ります。


    横須賀美術館「スカジャン展」会場より 第3章「スカジャンの現在」
    第3章「スカジャンの現在」


    展覧会にあわせ、横須賀市内のドブ板通り商店街内「ドブ板ステーション」にて、スーベニアコレクションも展示しています。

    ドブ板通りまで、バスを使えば美術館から1本。ドブ板までのバスチケットがセットになった楽しいスカジャン型の入場券も、チケット売り場で販売中しています。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年11月22日 ]

    横須賀美術館「スカジャン展」会場風景
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 日本地図
    第2章「ヴィンテージ・スカジャンの世界」 ハンドプリント
    テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)が保管する貴重な刺繍型も展示
    《Chrome Hearts Tokyo Store 20th Anniversary Souvenir Jacket》Chrome Hearts 2019年 テーラー東洋(東洋エンタープライズ株式会社)蔵
    《SUEDE VINTAGE MIJ RETRO "SKAJAN"》PUMA | atoms 2021年 MIKASA蔵
    横振り刺繍の第一人者、大澤紀代美の作品
    スカジャンを着て撮影できるフォトスポット
    会場
    横須賀美術館
    会期
    2022年11月19日(土)〜12月25日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    休館日
    12月5日(月)
    住所
    〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4丁目1番地
    電話 046-845-1211(代表)
    公式サイト https://www.yokosuka-moa.jp/
    料金
    一般1,300(1,040)円、高校生・大学生・65歳以上=1,100(880)円、中学生以下無料
    *所蔵品展、谷内六郎館も観覧できます。
    *( )内は20名以上の団体料金
    *高校生(市内在住または在学に限る)は無料
    *身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と 付添1名様は無料
    展覧会詳細 スカジャン展 詳細情報
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