各所で開催される芸術祭の中でも、高い知名度と動員数を誇る瀬戸内国際芸術祭(略称:瀬戸芸)。第5回目となる瀬戸内国際芸術祭2022が4月14日(木)に開幕しました。
春会期は終了していますが、夏と秋にも開催されますので、見どころをご紹介したいと思います。
今回は高松に宿泊し、4日間で各所をまわる行程。まずは男木島と女木島です。
高松からフェリーで男木島へ
瀬戸芸は瀬戸内海の島々が会場なので、船で会場をめぐります。芸術祭にあわせて、3日間乗り放題の共通乗船券も販売されています。
ただ、航路は6航路限定なのと、同じ航路でも高速船には使えないのは注意が必要です。
チケットはコンビニなどで引換券を事前に購入し、現地で実券に引き換えた日から3日間使用可能です。移動の計画を立ててから購入する事をおすすめします。
共通乗船券は大人2,600円。今回ご紹介する行程なら買ったほうがお得です。
男木島に近づくと、フェリーの上からでも目立つ建物は《男木島の魂》です。屋根の文字は日本語、アラビア語、ロシア語など8つの言語で、晴れた日には特に美しさが際立ちます。
建物は高松市男木交流館 。2010年に開催された第1回目の瀬戸芸で建てられました。
og01《男木島の魂》ジャウメ・プレンサ(スペイン) [通期展示]
海沿いに歩いていくと、山に足が生えたような作品が見えてきます。
旧約聖書のノアの方舟からの着想したという《歩く方舟》。海に向かって歩いていきそうな、楽しい作品です。
og16《歩く方舟》山口啓介 [通期展示]
作品の案内は、各所にある看板が目印です。ただ、この看板に現在地を記して欲しいと思いました。
作品巡りに欠かせないのが公式アプリです。悪天候でフェリーの運行が変更になった時など、島や交通に関する緊急情報がプッシュ通知で入るので、ぜひご用意ください。
作品案内の看板。屋内の作品は9時半からなので、ゆっくり歩いて行きました。
海から離れて陸の方に進むと、迷路のように入り組んだ坂道に入ります。男木島は急な坂道がいので、歩きやすい靴での訪問は必須です。
《漆の家》は、家を伝統的な漆芸技法でリノベーションした作品です。香川の漆芸は全国的にも有名で、重要無形文化財保持者(人間国宝)を何人も輩出しています。
og14《漆の家》漆の家プロジェクト [春・夏・秋]
近くにある《部屋の中の部屋》は、トリックアートのような作品です。部屋の中に90度回転した部屋が入っています。
作家は大岩オスカール。上手にポーズを取ると、楽しい写真が撮れそうです。
og15《部屋の中の部屋》大岩オスカール(ブラジル) [春・夏・秋]
《アキノリウム》は、古民家で自動演奏するサウンドオブジェの作品。1階ではサウンドオブジェの影絵が、2階に上がるとサウンドオブジェの楽しい動きを見ることができます。
松本秋則による《アキノリウム》は、大地の芸術祭(新潟)や北アルプス国際芸術祭(長野)など、芸術祭ではお馴染みです。優しい音色と楽しい動きは、時間を忘れて見入ってしまうでしょう。
og08《アキノリウム》松本秋則 [春・夏・秋]
明るい色調で、マティスのジャズを彷彿させる作品は《瀬戸で舞う》。作家の川島猛がニューヨークで制作した「Blue and White」シリーズのパネルを、古民家に展示したものです。
川島は1963年渡米し、ニューヨークを拠点に活動。瀬戸芸には初回から参加しています。
og07《瀬戸で舞う》川島猛とドリームフレンズ [春・夏・秋]
夏に公開される3点の作品を残して、男木島の作品はすべて鑑賞しました。ゆっくりまわっても時間的には問題ありません。港近くでサンドウィッチをテイクアウトし、女木島に向かいます。
女木港の防波堤と防潮堤にずらりと並んでいるのは《カモメの駐車場》。その数、およそ300羽。風が吹くと向きが変わり、キシむ音がまるでカモメの声のように聞こえます。
mg01《カモメの駐車場》木村崇人 [通期展示]
すぐ近くには、青銅製のグランドピアノの作品。4本の帆が風にひらめきます。
作家は上海生まれで、本名は劉駿(リュウシュン)。仏教寺の一角で美術と人生の修行をしている作家にとって、芸術は精神的な追及。そのため、作品は主に僧名でおこなっているそうです。
mg02《20世紀の回想》禿鷹墳上(中国) [通期展示]
休校中の小学校の校舎から校庭まで使った大規模なインスタレーション《女根 / めこん》。大竹伸朗の作品です。
タイルのモザイク、ワニのオブジェ、船材などを使い、ダイナミックでエネルギーに満ちた空間は大竹ならではといえます。
mg13-B《女根 / めこん》大竹伸朗 [春・夏・秋]
古い倉庫を活用し、シアターのようにした作品は《ISLAND THEATRE MEGI 「女木島名画座」》。
小規模ですが座席やスクリーンもあり、劇場内は往年のスターたちの肖像がペインティングされています。
mg14《ISLAND THEATRE MEGI 「女木島名画座」》依田洋一朗 [春・夏・秋]
民家の室内に入ると、お膳と座布団が並ぶ和室。奥の壁面には2つの大きな鏡があり、一見では室内が映っているように見えますが…。
人の知覚を揺るがす現代美術の巨匠、レアンドロ・エルリッヒの作品です。砂利が敷き詰められた中庭も、じっと見ていると何かが起こります。
mg15-B《不在の存在》レアンドロ・エルリッヒ(アルゼンチン) [春・夏・秋]
空き家の外壁を覆っているのは、古着の断片を繋ぎあわせた紐です。室内にも無数の紐が下げられていて、その中を縫うように進む事ができます。
持っていた人の記憶や時間が宿っている衣服を用いて、新たな時間を作り出すインスタレーション作品。会場にいた作家の大川友希さんにも話を聞く事ができました。
mg24《 ≪女木島名店街≫ 結ぶ家》大川友希 [春・夏・秋、新作]
大川友希さん
女木島では、やや遠方にある鬼ヶ島大洞窟の作品以外は全て鑑賞し、高松に戻りました。
訪問の参考に、この日の行程をまとめました。紹介しきれなかった作品も含め、動画もお楽しみください。
【タイムスケジュール】
08:00~08:40 高松~(女木島経由)~男木島 ※共通乗船券
08:50~12:30 男木島の作品鑑賞[徒歩] 春会期に見られる12作品は全て鑑賞。室内作品は9:30からなので要注意
13:00~13:20 男木島~女木島 ※共通乗船券
13:30~17:00 女木島の作品鑑賞[徒歩] 鬼ヶ島大洞窟の作品以外は全て鑑賞
17:20~17:40 女木島~高松 ※共通乗船券
(高松に宿泊)
[ 取材・撮影・文:M.F. / 2022年4月22日~25日 ]
→ 瀬戸内国際芸術祭 2022(レポート その1)
→ 瀬戸内国際芸術祭 2022(レポート その2)
→ 瀬戸内国際芸術祭 2022(レポート その3)
→ 瀬戸内国際芸術祭 2022(レポート その4)
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