東京・天王洲に、新しいアートスポットが誕生。2020年12月12日(土)、現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT(ワット)」がオープンしました。
開設したのは寺田倉庫。美術品保管を主軸とする倉庫会社ならではの視点で、日本を代表するコレクターが自らの価値基準で収集した作品との出会いを創出するアート展示施設として整備したものです。

「WHAT」入口
施設名の「WHAT("W"ARE"H"OUSE OF "A"RT "T"ERRADA)」には、倉庫を解放して普段見られないアート覗き見するという、ユニークなコンセプトから命名されました。
開館記念の展覧会は2つ。「—INSIDE THE COLLECTOR’S VAULT, VOL.1— 解き放たれたコレクション展」と「謳う建築」展が同時に開催されています。

2つの展覧会
まずは「解き放たれたコレクション展」。精神科医で現代アートコレクターとしても有名な高橋龍太郎氏と、実業家・投資家のA氏という2名のコレクターが蒐集した約70点を紹介します。
高橋龍太郎コレクションは「描き初め」がテーマ。高橋コレクションは以前このコーナーでも「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」(2015年)をご紹介しましたが、今回は今まで展示されなかった若い作家たちに焦点を当てるとともに、先行する作家の作品では新しい展開を見せていきます。

「解き放たれたコレクション展」から、高橋龍太郎コレクション
もう一方のA氏コレクションは、2000年前後の奈良美智作品が中心。可愛さ、残酷さ、強さといった奈良作品の特徴が良く現れた作品が並びます。
A氏は2001年に奈良美智の作品を横浜美術館で鑑賞。サイン会をしていた本人の素朴な人柄にも惹かれて、後に作品を購入した事が、A氏のコレクションのきっかけになりました。
本展のキモといえるのが、コレクター自身による解説。会場にあるQRコードを読み取ると、両者が自分の声で、コレクションの経緯や作品の魅力を語ります。

「解き放たれたコレクション展」から、A氏コレクション
もうひとつの展覧会が「謳う建築」展。以前の建築倉庫ミュージアムを引き継ぐ、建築倉庫プロジェクトによる企画・展示です。
展覧会の内容は、建築と文芸の領域を横断するユニークな企画。住まいと向き合い続けた建築家が生み出した住宅に宿る空気感や、五感を揺さぶる空間の本質について、文芸家が謳う作品を通して浮かび上がらせていきます。

「謳う建築」展 会場
篠原一男による「谷川さんの住宅」に、谷川俊太郎が新詩を創作。さらに吉村順三の住宅を詩人・蜂飼耳が、中村好文の住宅を詩人・小池昌代が体感・詩作するなど、住宅作品の設計時のプロセス模型20点以上やスケッチ、図面などが展示されています。

「謳う建築」展 会場
天王洲地区は、隈研吾が設計した画材ラボ「PIGMENT(ピグモン) TOKYO」、ギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX」などを寺田倉庫が運営。現代アートの一大拠点として発展を続けています。
最寄りは天王洲アイル駅。品川からも徒歩圏内ですが、レンタサイクルもおすすめします。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年12月11日 ]