ブリヂストン美術館を前身とするアーティゾン美術館は、昨年の開館以来、休館中に収集された作品を順次公開してきました。
今回の展覧会は、未公開の新収蔵作品92点を中心とした201点他の14セクションで構成されています。
会場入口
まず目に飛び込んでくるのは、石橋コレクションの中核となる日本近代洋画や印象派以降の西洋近代絵画。そして、そのコレクションの厚みを増すような新収蔵作品です。
「1 藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画」展示風景
左)中村彝《静物》1919年頃、右)荻須高徳《アベスの階段》1954年
また、キュビスムから抽象絵画への系譜は多角的に取り上げられ、調査・研究に裏打ちされた収蔵方針であることがよく分かります。
「2 キュビスム」展示風景
抽象絵画に大きな影響を与えたカンディンスキーとクレーは独立したセクションで取り上げられており、見応えがありました。
「3 カンディンスキーとクレー」展示風景
第二次世界大戦を機に芸術家たちがパリから亡命したこともあり、1940年代後半のニューヨークを中心に抽象表現主義が展開されました。
この中で活動した女性画家たちは、近年世界的に注目されているそうです。
「5 抽象表現主義の女性画家たちを中心に」展示風景
「7 デュシャンとニューヨーク」のセクションでは、キュビスムから転向したマルセル・デュシャンと共にニューヨーク・ダダを牽引したマン・レイらの作品に加えて、デュシャンと親交があったジョゼフ・コーネルの作品が展示されています。
左)ジョゼフ・コーネル《見棄てられた止まり木》1949年、右)ジョゼフ・コーネル《衛生の観測Ⅰ》1956年頃
800点以上も制作された箱の作品とは別に手掛けていたコラージュ作品が、幻想的で惹かれました。
目新しいところでは、オーストラリアの現代美術もありました。文化と伝統を継承しながらも革新的な作品たちは、人間の根源にある精神と懐かしさを感じました。
「10 オーストラリア美術ーアボリジナル・アート」展示風景
京橋のブリヂストン本社ビルの空間デザインを担当した倉俣史朗。ビルで使用されていた倉俣デザインの椅子の一部と、エレベーター・ホールに設置されていた田中信太郎の彫刻作品は現在、美術館の6階ロビーに展示されています。
「4 倉俣史朗と田中信太郎」展示風景
親交があったという二人の作品は、展示室でも寄り添って調和していました。
これまでの石橋財団コレクションから拡充した領域の作品を見ていると、新しい美術館の方向性がダイレクトに伝わって来ました。それは、展覧会を通しての所信表明のようにも感じました。
[ 取材・撮影・文:新井幸代 / 2021年2月12日 ]
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