19世紀の後半、フランスに「印象派」と呼ばれる一群の画家たちが登場しました。モネやルノワールらに代表されるこの一派は、自然の印象や光の効果、人々の生活の息吹など身近な題材を、明るい色彩といきいきとした筆づかいで描き、絵画芸術に新風を吹き込みました。自由で革新的な彼らの試みは、活気溢れる新しい時代の空気を映し出しながら、美術の歴史を大きく変革するものとなりました。
本展では、絵画の一大革命であった印象派の動向に焦点を当てつつ、その前後の19世紀フランス絵画の流れを4つの章によって辿りながら、印象派の誕生した時代を浮き彫りにします。序章の「ドラクロワとサロンの画家たち」では、パリのサロン(官展)を舞台に活躍した画家たちを展示し、続く第1章の「バルビゾン派」で、戸外の風景を描き印象派の先駆者となったコロー、ミレー、ドービニーらバルビゾン派を紹介します。そして第2章の「印象派の誕生」において、モネ、ルノワール、シスレー、スーラなど、印象派や新印象派たちが切り開いた新しい視覚世界にスポットを当てます。さらに第3章の「印象派以後」では、後期印象派のゴッホや親密派と呼ばれたボナールなど、印象派に影響を受けた個性豊かな画家たちの多彩な芸術の軌跡を辿ります。
本展は、フランスのリール美術館、ボルドー美術館、ドゥエ美術館、アメリカのツイード美術館、ポーランドのヨハネ・パウロ二世美術館の、海外の5つの美術館コレクションを中心に国内の美術館の所蔵品を加えて構成されるもので、19世紀フランス絵画の名品約80点を一堂に公開します。ミレー、コローらバルビゾン派から、モネ、ルノワール、そしてゴッホへと繋がる印象派誕生の系譜をご堪能いただける絶好の機会です。熊本県立美術館開館35周年を記念して開催します。