1974年(昭和49年)、東京・原宿の竹下口交差点にオープンしたパレフランス・ビル(現存せず)。その2階に日本で初めてのブティックをオープンしたのがカルティエです。
記念すべき初出店から、今年でちょうど50周年。カルティエと日本を結ぶさまざまなストーリーを紹介する「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』展 ― 美と芸術をめぐる対話」が、東京国立博物館 表慶館で開催中です。
会場に入ると、エントランスの大空間には澁谷翔によるインスタレーションが広がります。カルティエ ジャパン50周年を記念するためにつくられた新作で、47都道府県すべての地方日刊紙の1面に、空を描いた作品です。
日本橋を起点に日本全国を旅して制作した、絵画50点の連作。歌川広重《東海道五十三次之内》へのオマージュ作品です。
展覧会はホールの右側から始まります。メゾン カルティエは1847年に創業。時代はジャポニスムが欧州を席巻する少し前で、日本への関心はカルティエの作品にも投影されています。
1898年から父とともにメゾンの事業経営に参画したルイ・カルティエは、パリの「日本美術の友の会」の会員でもありました。
ルイ・カルティエは200点以上の日本美術コレクションを有していました。後にオークションで売却されたため、現在でもカルティエのアーカイヴに残されているのは数点ですが、手鏡からインスピレーションを受けた置き時計や、印籠から着想したヴァニティケースなど、日本美術を再解釈し、独自のクリエイションとして発表されたものなど、日本文化からの影響が顕著な、興味深い作品が並びます。
カルティエは1988年の青山・スパイラルホールを皮切りに、東京都庭園美術館(1995年)、京都・醍醐寺(2004年)、東京国立博物館 表慶館(2009年)、国立新美術館(2009年)と、過去に5回、日本で「カルティエ コレクション」展を開催しています。
「カルティエ コレクション」は1983年に創設。カルティエがその歴史の中で生み出した、3,500点を超える代表的作品を収蔵しています。
日本に対して特別な関心を寄せているカルティエは、過去の日本美術の参照だけでなく、同時代の日本人アーティストとのコラボレーションも積極的におこなっています。
会場の後半では、多くの日本人アーティストをヨーロッパでいち早く紹介してきたカルティエ現代美術財団がセレクトした、日本のアートシーンを代表する16人の国内外アーティストの作品が紹介されています。
大正天皇のご成婚を記念して建設された東京国立博物館 表慶館の雰囲気ともぴったりマッチした展覧会。展示ケースが置かれている台に畳が使われていたり、工事現場の足場などで見られるパイプを用いたりと、空間演出もユニークです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2024年6月10日 ]