デンマークが誇る名窯「ロイヤルコペンハーゲン」とともに,かつてそれと人気を二分した「ビングオーグレンダール」の19世紀末から20世紀初頭に制作されたアール・ヌーヴォー磁器を紹介します。ロイヤルコペンハーゲンといえば,白地に青一色の「ブルーフルーテッド」や「イヤープレート」のシリーズが有名ですが,およそ1世紀前のアール・ヌーヴォー全盛期には,淡いグラデーションの釉下彩,鮮やかな虹彩を生じる結晶釉など,当時の最先端を誇る多彩な釉薬技術によって世界をリードした窯でした。動植物や昆虫など,自然のモティーフをかたどった優美なフォルムと,清澄な色合いは世界的な脚光を浴び,アール・ヌーヴォーのピークといわれる1900 年のパリ万国博覧会ではグランプリを受賞しています。この博覧会を目の当たりにした日本の陶磁器業界は,旧態依然とした自国の状況との差に衝撃を受けました。デザインの刷新や釉下彩技法の習得が積極的に行われるようになり,板谷波山ら日本の陶芸家達にも大きな影響を与えています。
本展覧会は,横浜市在住のコレクター塩川博義氏の協力を得て,これまで日本で紹介される機会の少なかったアール・ヌーヴォー期におけるロイヤルコペンハーゲン,
ビングオーグレンダールの多彩な作品を一堂に展示するとともに,明治時代後半の日本の釉下彩作品も併せて紹介するものです。