京都府の最南部、奈良市に隣接する地域は旧国名の山城国にちなんで、いま「南山城」と呼ばれています。なだらかな山間を木津川が流れる風光明媚な地であり、仏教の伝来後、七世紀にはこの地域でも寺院の建立がはじまりました。
南山城が歴史の表舞台に登場するのは、聖武天皇の恭仁京造営によってであり、木津川への架橋や寺院の建立などに行基の活躍がありました。
平城京から平安京への遷都以降も南山城は新旧両都をつなぐ回廊的な役割を果たす地域として、重要性を増すことになります。東大寺や興福寺といった奈良の大寺との深い関わりのなかで寺院があいついで建立され、また木津川流域の山々は俗世を離れた聖地として山岳修験の拠点とされました。
鎌倉時代には、はじめ興福寺に学んだ解脱上人貞慶が笠置寺から海住山寺へと拠点を移し、釈迦如来弥勒菩薩、観音菩薩に対する信仰を深めるとともに、南都の戒律復興に努めたことが特筆されます。
さらに江戸時代には、各地で念仏を広めた袋中上人が晩年に瓶原(木津川市加茂町)を拠点とするなど、南山城は各時代を通じて文字どおり日本仏教の聖地でありつづけました。
浄瑠璃寺九体阿弥陀像の修理完成を記念して開催する本展では、南山城とその周辺地域の寺社に伝わる仏像や神像を中心に、絵画や典籍・古文書、考古遺品などを一堂に展観いたします。
本展を通じて多彩な作品の魅力を堪能していただくとともに、奈良や京都との関わりのなかで南山城地域が育んだゆたかな歴史や文化について再認識する機会となれば幸いです。
前期展示−7月8日(土)〜8月6日(日)
後期展示−8月8日(火)〜9月3日(日)
静かな山間の地に根付いた信仰の寺には数多くの仏像などが大切に守られており、南山城地域の寺宝を一堂に展観できる特別展が奈良国立博物館にて開催中です。