本展のタイトルは、明治生まれの詩人・高橋元吉が詠んだ詩の「咲いたら花だった吹いたら風だった」という一節からきています。それがなにかわかるまでは「なにか得体の知れないもの」でよいと言い、おおらかな気持ちでものごとを見ようとするこの詩人にとって、世界は新鮮な発見に満ちていたかもしれません。本展では、「得体の知れないもの」が花になり風になるように、単なる現象がひとにとって意味をもつ体験になる瞬間に注目します。
本展に参加する4名の作家もまた、海や山で見た景色や日々の出来事など、日常的な体験に目を向けます。その作品はどこか確定できない部分があり、いつまでも汲みつくせない魅力を湛えています。たとえば出展作家のひとり、川角岳大が素潜りやドライブ中の体験を思い出しながら淡く描く絵画は、時間や空間の伸縮や記憶の濃淡を思わせ、わたしたちがなにかを見たり、感じたりするときの身体感覚や心の動きを思い起こさせます。あるいは、ふだんは気に留めないような小さな謎を映画や写真、日常会話のなかに見つけ探っていく澤田華、センサーや風力計を用いて天気を作品に取り込む船川翔司、これまで多くの作品に おいて身体や言葉を用いてリアルタイムで作品を更新しつづけてきた関川航平も、それぞ れの仕方でひとがなにかを体験することについて示唆に富む仕事を続けています。この機会に気鋭の4作家がつくりだす4つの体験をぜひお楽しみください。
(公式サイトより)
作品のきっかけは、身の回りの風景をよく観察することから。タイトルを聞いただけでは、どのような作品が展示されるのか、まるで見当がつきませんが、現代美術作家4人を紹介します。