今や世界に知られるSAMURAI=侍という言葉には、戦国時代を生き抜いた武士の姿、時代劇に登場するお侍さん、あるいは現代のスポーツ選手など、さまざまなイメージが思い起こされます。「侍」や、ほぼ同様に使われる「武士」の語は、時代によって異なる意味をもち、美術においても多様に表されてきました。
本展では、頼朝・義経など語り継がれた源氏のヒーローたち、威儀を正して参列する諸大名、勇壮な馬追の祭礼、凄惨な合戦の様子など「武士を描いた絵」を中心に、没後180年の節目を迎える渡辺崋山、歌川(安藤)広重など「武士階級の画家が描いた絵」や、武家・武芸に関わる屏風など、武士をテーマとする絵画や工芸品を約30件展示します。
源頼朝や曾我兄弟ゆかりの箱根神社を山上に戴き、石橋山古戦場や小田原城などにも近く、武士の歴史との関わりが深い箱根の土地で、日本の歴史を築いてきたSAMURAIの世界をお楽しみください。
【特集展示 中国の青磁】
悠久の歴史を誇る中国陶磁のなかで、長い年月をかけて豊かな発展をとげてきた青磁。古来、理想の色を探求しながら、洗練された形・文様のさまざまな青磁を高度な技によって生み出してきました。青磁は、中国歴代の皇帝たちが珍重してきた崇高なやきものです。
本特集は、戦国時代(紀元前5〜紀元前3世紀)の原始青磁、三国~南北朝時代(3~6世紀)の古越磁(こえつじ)、宋〜明時代(10~17世紀)の越州窯(えっしゅうよう)・耀州窯(ようしゅうよう)・汝窯(じょよう)・龍泉窯(りゅうせんよう)という、誕生から隆盛期におよぶ約31件の作品(初公開2件含む)を一堂に展示します。とりわけ、中国陶磁の「黄金時代」と評される宋時代の青磁の競演は見どころです。時代や産地によって異なる色と質感をそなえた青磁の“美”の変遷を探ります。やきものに詳しい方、入門の方の双方がお楽しみいただける作品解説を併置し、普段触れる機会の少ない中国の青磁の世界をご紹介します。