東京国立博物館 平成館では、特別展「桃山ー天下人の100年」が始まりました。
安土桃山時代は、室町幕府滅亡から江戸幕府開府までの約30年間です。この短期間に、日本美術史の中でもとりわけ豪華絢爛な「桃山美術」が発展しました。
ちなみに、戦国時代は戦国大名が群雄割拠した、応仁の乱から室町幕府滅亡までの1世紀ほどをさすことが多く、年代が異なります。
今回の展示では「桃山美術」を中心に、室町時代の終わりから江戸時代初期までの100年間に渡る美の変遷を、屛風、茶道具、刀剣・甲冑などから辿ります。
展示は7章構成です。盛りだくさんのため、抜粋してご紹介します。
桃山の精髄 ー 天下人の造形
重要文化財 銀伊予札白糸威胴丸具足 安土桃山時代・16世紀 宮城・仙台市博物館
まず入口を入ると、変わり兜にモダンな配色の甲冑ひと揃いに迎えられます。
「重要文化財」、「伊達政宗が豊臣秀吉より拝領」というキャプションにのっけから心高まり、展示全体への期待が膨らみます。
なお、こちらの品は前期のみの展示となっています。今回の企画展全体に言えることですが、一部の品で前期・後期より細かい展示期間が設定されているため、注意が必要です。
金銅五三桐紋釘隠 安土桃山時代 文禄3年
少しマニアックなところでは、釘隠が展示されていました。
釘隠には、柱などに打った釘の頭を隠す役割があり、時代が下がるにつれて装飾性が増していきます。お城やお寺ごとに個性豊かで細工も細かいので、注目してみて下さい。
国宝 檜図屛風 狩野永徳筆 安土桃山時代・天正18年 東京国立博物館
こちらは、豊臣秀吉の命によって建てられた宮邸の襖絵を仕立て直した屛風です。
江戸時代の画伝書に「大蛇がのたうつよう」と評されたとおり、インパクトと強い生命力を感じずにいられません。
左)重要文化財 聖フランシスコ・ザビエル像 江戸時代・17世紀 兵庫・神戸市立博物館 右)重要文化財 泰西王侯騎馬図屛風 江戸時代・17世紀 兵庫・神戸市立博物館
重要文化財 日本図・世界図屛風 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
いわゆる日本的な品だけでなく、教科書でおなじみの聖フランシスコ・ザビエル像や、日本地図と世界地図の対比が主題として斬新な屛風などの「南蛮美術」の展示もありました。
変革期の100年 ー 室町から江戸へ
左)織田信長像 狩野永徳筆 安土桃山時代・天正12年 京都・大徳寺 中央)重要文化財 豊臣秀吉像画稿 伝狩野光信筆 安土桃山時代・16世紀 大阪・逸翁美術館 右)東照大権現像 四代木村了琢筆 天海賛 江戸時代・17世紀 東京・徳川記念財団
章題に合わせ、戦国時代の三英傑、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の像が隣り合わせで並んでいるだけで、たまりません。
茶の湯の大成 ー 利休から織部へ
上)書状 千利休筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館 左)本手利休斗々屋茶碗 朝鮮時代・16世紀 大阪・藤田美術館 右)古銅角木花入 明時代・15~16世紀 大阪・藤田美術館
千利休と古田織部の関係性が偲ばれる品が並び、展示の行間に思いを馳せてしまいます。
桃山の成熟 ー 豪壮から瀟洒へ
展示室風景
屛風や襖が並び、きらびやかな佇まいです。
武将の装いー刀剣と甲冑
展示室風景
紫糸威伊予札五枚胴具足 安土桃山時代・16世紀 山形・上杉神社
前の章から一変して、刀剣・甲冑が居並びます。暗めの展示室でスポットライトを浴びる様が美しく、格好いいのひとことにつきます。
くらくら目眩がするほどの国宝、重要文化財のオンパレードでした。また、目まぐるしい激動の時代の息吹を肌で感じられる展示でした。
※本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。
[ 取材・撮影・文:新井幸代 / 2020年10月5日 ]
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