東京藝術大学大学美術館陳列館で開催中の「先端芸術2020/アペラシオンAPPARATION」に行ってきました。
会場は、正門に入って右側の東京藝術大学大学美術館ではなく、左側にある陳列館。藝大アートプラザに向かう正木門から入って、右手に進みます。
おもむきがある陳列館は、1929年(昭和4年)竣工。大学美術館の本館ができるまでは、芸術資料館のメイン・ギャラリーでした。
1999年に設置された、東京藝術大学先端芸術表現科の歩みを振り返る展覧会。出身アーチストたちの作品が並びます。
こちらは赤松音呂さんの作品。ガラス器内の水の中に発生する「渦巻き」のゆらぎの音を聴くインスタレーションです。
赤松音呂《CHOZUMAKI》
生きものとの関わりから生まれる作品を発表している、AKI INOMATAさん。ここでは透明なアンモナイトの殻にタコが入っていく様子が見られます。
絶滅したアンモナイトは、イカやタコの近縁。またタコは、進化の過程で貝殻を捨てたとされています。
AKI INOMATA《進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)》
自ら撮影した写真表面を消した(削る、燃やすなど)作品を発表している、多和田有希さん。
《Heaven's Gate》シリーズでは、街の間から光が立ち上がるようです。地面が爆発する手前のような、不穏な空気をイメージさせます。
多和田有希《Heaven's Gate 5》 / 《Heaven's Gate 3》
2階に進む階段には黒い凧が。安田 葉さんの《Shape of the wind》です。
インドネシアでカイト作りを学び、地元の人々と一緒に作った映像作品と、自分が作ったカイトを展示しました。
安田さんは原始的な伝統文化に興味を持ち、世界各地で出会う人から着想を得て制作をしています。
安田 葉《Shape of the wind》
昨年の千葉市美術館での個展「目 非常にはっきりとわからない」が、大きな反響を呼んだ、目[mé]。私も見に行きましたが、頭の中がグルグル回るような展覧会でした。
ここでは、千葉市美の会場でも展示されていた《アクリルガス》が。千葉市美のエレベータで7階と8階を何度も往復した記憶がよみがえりました。
目[mé]《アクリルガス T-1#19》
人形を撮った写真作品だけでなく、新聞連載小説の挿絵でも活躍している菅 実花さん。
ラブドールが妊婦姿になった《The Future Mother》は菅 実花さんの修了制作で、2016年の発表当時も注目を集めました。
菅 実花《The Future Mother》
展覧会のメインビジュアルは、鈴木ヒラクさんの《Constellation》シリーズ。背景は真っ黒ではなく、墨や土などで染められた「茫漠とした空間としての背景」。そこに、光を放つようにシルバーの点や線が描かれます。動きの軌跡のような、文字のような、宇宙のような、不思議な形は、デジタルなイメージが漂います。
鈴木ヒラク《Constellation》シリーズ
会期はとても短いですが、現代美術好きは見逃せません。入場無料も嬉しい限り。ただし、事前予約制です。お急ぎください。
会場2階
[ 取材・撮影・文:S.E. / 2020年9月21日 ]
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