昨年は絵画の技法と用語を解説した「はじめての古美術鑑賞」展。好評を受けて開催される本展では、料紙装飾がテーマです。聞きなれない「料紙」という言葉に抵抗を感じられないように、展覧会名は分かりやすく「紙の装飾」としています。
展示室1と2を使った会場は「雲母(きら)に光を!」「「染め」のバリエーション」「金銀の多彩な飾り」「さまざまな装飾技法」の4ブロックで構成。根津美術館のコレクションを中心に、絵画に取り込まれた例も含めて計57件が紹介されます。
会場
では数点、実際の作品をご紹介しましょう。
古くから紙の装飾に用いられている、白雲母の粉末。重要美術品《伊予切》は全面に雲母砂子が撒かれています。正面からでは分かりにくいですが、横に回ると美しい輝きが確認できます。
料紙装飾の教科書のような作例が《百人一首帖》智仁親王筆。紙を極彩色に染め、金銀泥(きんぎんでい)で下絵を描き、金の切箔(きりはく)や砂子(すなご)を撒いています。極細のペンで描いたような網は、針のように切った箔「野毛(のげ)」で表現しています。
重要美術品《嘉元百首切》も切箔や砂子を用いた豪華な作品。注目は松や笹の表現で、型紙で糊を置き、その上から金銀砂子を撒いています。角度を変えてみると表情が一変しますので、いろいろな方向からご覧ください。
順に、重要美術品《伊予切》、《百人一首帖》智仁親王筆、重要美術品《嘉元百首切》
冒頭の雲母のブロックに並んでいる、独特の形状の照明器具を見て「どこかで見覚えが…」という方は、かなりの根津美術館ツウ。2011年の「名物刀剣」展で、刀剣の刃文を美しく見せるために開発された器具を改良したものです。金銀に比べると輝きが弱い雲母ですが、紙の近くから照明を当てる事によって、雲母の特性をお楽しみいただけます。
いつものように他の展示室ではテーマ展示が開催中。展示室5の「焼き締め陶」は素朴ながら、かなりパワフル。こちらもおすすめです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年5月24日 ]
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