国芳 → 芳年 → 年方 → 清方と、一文字ずつ継いでいるので、覚えやすい国芳から清方までの流れ。清方の門人には伊東深水や川瀬巴水らも連なるので、この系譜は日本の近代美術において大水脈といえますが、なぜかスルーされる事が多いのが水野年方です。単発的に作品が紹介される事はあっても、作品をまとめて展示する機会はこれまでありませんでした。
今年はちょうど生誕150年のメモリアルイヤー。展覧会を担当した太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さんに、企画の意図と見どころを解説していただきました。
太田記念美術館 主席学芸員の日野原健司さん日野原さんに詳しく説明していただきましたが、年方の十八番といえる美人画について、再度ご紹介したいと思います。
「茶の湯日々草」は、茶事の流れを絵で紹介する揃物。それまで男性のものだった茶道は、近代に入って女性の礼法に組み入れられます。年方は教養として身に着けるべき所作を、気品溢れる女性の姿で描きました。
「今様美人」は、女性の月ごとの風俗を描いた揃物。「三井好 都のにしき」は、三井呉服店(三越の前身)の広告。描かれている装いは時代が求めていた日本女性の姿で、今ならファッショングラビアといえるもの。清楚で理知的、いかにも大和撫子という女性を描かせたら天下一品でした。
天下一品の美人画日野原さん曰く「ひょっとしたら最初で最後の大規模展かも」との事。その実力に比べるとやや寂しく思えますが、少なくとも近々行われる事はなさそうです。もし美術ファンを自称している方なら、この手の展覧会を見逃すときっと後悔します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年11月3日 ]■水野年方 に関するツイート