館蔵の絵画作品から厳選した優品を紹介する本展。第二部も出品35件のうち国宝1点、重要文化財11点、重要美術品5点という豪華版です。
会場に入ると、右手に牧谿の掛軸が2点。南宋時代の僧である牧谿は、中国での評価は高くありませんが、湿った空気まで描くような繊細な表現は日本で好まれ、多くの追随者を生みました。
奥には屏風が3点ありますが、いずれも牧谿からの影響が顕著。能阿弥《四季花鳥図屏風》は、禽獣がすべて牧谿の画からの引用。長谷川等伯《竹鶴図屏風》も、左隻の図様は牧谿の作品から。同じく等伯の《松に鴉・柳に白鷺図屏風》も、右隻の松が牧谿のスタイルです。
水墨画の優品がずらり出光美術館では10年ぶりに公開されている国宝《伴大納言絵巻》。第二部では中巻が紹介されています。
中巻のクライマックスといえるのが、子どもの喧嘩。親の加勢に腹を立て、「放火の真犯人は伴大納言」という衝撃の新事実が明らかになります。
喧嘩の場面は、異なった時間に起きた出来事を一つのシーンに描く「異時同図法」による描写。
国宝《信貴山縁起絵巻》にも見られるように、日本の絵巻の特徴といえます。
中巻も、群衆の描写が見事。天を仰ぐ、そっと耳打ちする、大声をあげる…。一人ひとりを見ていくと、時間が経つのを忘れてしまいます。
国宝《伴大納言絵巻》(中巻)さらに進むと、奥に《西湖図屏風》。絵画の主題としてしばしば描かれる中国・杭州の西湖を大観的に描いたのは、狩野派を大成させた狩野元信です。
会場後半は文人画です。中国の文人画への私淑から、日本では18世紀ごろから広まった文人画。日本文人画を京都で大成させた池大雅と与謝蕪村の屏風をはじめ、両者に続いて関西で活躍した浦上玉堂、青木木米、岡田半江、田能村竹田、尾張の山本梅逸、江戸の渡辺崋山による掛軸などを展示。文人画は、出光コレクションの一つの柱といえます。
会場後半は文人画が中心盛大な50周年記念展ですが、三部構成という事もあり、一部ずつの会期は短めです。第二部も約1カ月間のみで、第三部には全ての作品が展示替えされます。お早目にどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年5月12日 ]■出光美術館 美の祝典 に関するツイート