人々は古代から光の謎を解き明かそうとしてきましたが、その実態が分かったのはわずか100年ほど前。光の科学と研究はそれから急激に進歩し、今年10月に3人の日本人研究者が「青色LEDの発明と実用化」でノーベル賞を受賞した事も記憶に新しいと思います。
本展は電波や赤外線、紫外線、X線など目に見えない光も含めて、総合的に光の世界を紹介する企画。3Dシアターでのオーロラ映像や豊富な実物展示、そして世界初公開となる「光る花」など、見どころたっぷりの特別展です。
会場入口からまずご紹介したいのは、蛍光する鉱石標本群。46億年の地球の活動で生まれた鉱物の中には、紫外線を当てると美しい蛍光を発するものがあります。
本展では貴重な蛍光鉱物60点を一堂に紹介。珪亜鉛鉱、ルビー、方解石、蛍石、オパールなど、色も光り方もさまざま。自然光のもとでは地味な鉱物が、照明を消すと不思議な光を発します。
鉱物の光2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士が発見した蛍光タンパク質(GFP)。これを応用した成果として紹介されているのが「光るシルク」です。
GFPの遺伝子を含むDNA溶液をカイコの卵に注射する事で、全身が緑色に光るカイコを開発。光る繭、光るシルクと開発は進み、十二単風の舞台衣装が制作されました。会場の衣装は、鮮やかな緑色やオレンジの光を発しています。
光るカイコと、光るシルク そして本展の目玉が「光る花」。トレニア(和名:夏スミレ)に海洋プランクトンの蛍光タンパク質を組み合わせて開発しました。
最新の遺伝子発現ツールにより、蛍光タンパク質を多量に蓄積。なんとドライフラワーや樹脂の標本にしても蛍光が失われません。
光る花は、中央のめしべが特に強く光ります実は展覧会会期中の2014~2015年は、光に関するメモリアル・イヤー。イスラム研究者のイブン・アル=ハイサムが光の研究をまとめたのが、ちょうど1000年前(1015年)。450年前(1564年)にはガリレオ・ガリレイが誕生。150年前(1865年)にはマクスウェルが「光は電磁波である」と発表しています。
記念すべき光の年に、ヒカリ展。読み応えたっぷりの図録も、あわせてお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年10月27日 ]