あべのハルカス美術館「マティスとルオー -友情50年の物語-」
撮影・文 [エリアレポーター]
胤森由梨 / 2017年4月3日
つかず離れずが理想的な友情のかたち?
マティスとルオー。
かたや冷静で、かたや情熱的な対照的な二人は描くテーマも大きく異なっていますが、50年もの交流を通じて、家族以上に強い絆で結ばれていました。
今年のはじめに、みすず書房から『マティスとルオー 友情の手紙』が出版されたことを記念して企画された今回の展覧会では、彼らが残した60通もの手紙の中から、11点もの手紙を通じて、足跡をたどることができるようになっています。
二人が初めて知り合ったのは、ギュスターヴ・モロー教室でのことでした。
モローは人間の内面を描き出そうとした、象徴主義の画家として有名ですが、彼らはモローの様式に染まりすぎることもなく、各々の興味の対象に向かっていきます。
以下に興味深かった作品をご紹介していきます。
こちらは、これはマティスとルオーが書簡のやり取りをするきっかけになった手紙です。マティスは手紙を書くのに、余白をうまく残している感じがしますが、ルオーの方はみっちり紙いっぱいに書いています。
(右から)アンリ・マティス《窓辺の女》(1920年)みぞえ画廊 / アンリ・マティス《オリーブの並木路》(1919年)パリ市立近代美術館
プレス内覧会では、学芸員の方が説明をしてくださいました。
マティスといえば、窓を描いた作品が有名ですが、この展覧会では、マティスの描く窓とルオーの描く窓を比較できるよう、隣り合う形で展示されています。(ルオーの方の窓は撮影不可だったので、このレポートでは、マティスの方だけをご紹介します。)
マティスは病気療養のために、南仏ニースを訪れますが、そこで色彩が移り変わっていく様子を目の当たりにし、感覚的なものを頼りに作品を描いていきました。
ルオー《聖ジャンヌ・ダルク−古い町外れ》(1951年)、個人蔵(ジョルジュ・ルオー財団協力)
ルオーの作品には、愛国心溢れる英雄的なモチーフとして「ジャンヌ・ダルク」がたくさん描かれてきました。
この作品は、フランスがナチスに降伏して占領された後に描かれたもので、ルオーは祖国フランスへの愛をジャンヌ・ダルクの図像を通じて表明しています。
マティスは油絵のイメージしかなかったのですが、晩年には切り絵も手がけています。
壁一面に並ぶこちらは、マティス《ジャズ》シリーズ(1947年)。
マティスは躍動感のある、サーカスの道化師や曲芸師の様子を切り絵で巧みに表現しています。
見ているだけでどこからかジャズの軽快な音楽が聞こえてきそうです。
この展覧会では、二人の画家としての始まりから終わりまで追うことができるようになっているので、作風の変化とともに、二人の関係がどのように築かれていったのかを是非会場でご覧ください。
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![胤森由梨 胤森由梨](https://www.museum.or.jp/storage/old/photos0/8122.jpg) |
胤森由梨
美術が大好きなアートライターです。美術鑑賞に関わる仕事を広げていきたいと思っています。現在、instagram「tanemo0417」「artgram1001」でもアート情報を発信中です!
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