日本テレビ開局60周年特別美術展として開催される本展。優品の展示だけでなく先進技術による映像も目玉といえる、いつもの東京国立博物館とはちょっと違った雰囲気の企画展です。
会場に入ると、いきなり大迫力の映像からスタート。4m×4mの大型スクリーン4基を使って、重要文化財《洛中洛外図屏風 舟木本》を拡大投影で解説します。
舟木本は浮世絵野の祖といわれる岩佐又兵衛による作品。熱気に溢れる京都の緻密な描写に、高精細映像が迫ります。
4m×4mのスクリーン4基による「舟木本VR画像」その舟木本を含め、本展では国宝、重要文化財に指定されている「洛中洛外図屏風」全7件が展示されます。
紹介される7件は上杉本、舟木本、歴博甲本、歴博乙本、福岡市博本、勝興寺本、池田本(上杉本・歴博乙本・勝興寺本は10月8日~11月4日に展示、歴博甲本・福岡市博本・池田本は11月6日~12月1日に展示、舟木本は通期展示)。同じ洛中洛外図でも人々の姿や建物の形など、描かれ方は個性的です。7件全てに描かれている御所のように、同じ場所を比べて楽しむこともできます。
洛中洛外図屏風が並ぶ展示室。御所はそれぞれ上杉本、舟木本、歴博乙本世界的に知られる観光名所のひとつ、龍安寺の石庭も4Kの超高精細映像で再現されています。
実際とほぼ原寸大にあたる幅約16mのスクリーンに投影された石庭は、情緒たっぷり。四季折々の表情が目にも鮮やかに映し出されます。
4K映像で再現された龍安寺の石庭龍安寺の堂内にあった襖絵は、明治期の廃仏毀釈の時代に散逸してしまいましたが、本展には旧龍安寺の襖絵18面が集結しました。
米国のメトロポリタン美術館とシアトル美術館から里帰りした襖絵も紹介されます。
龍安寺の襖絵は、米国からの里帰りも徳川家康が将軍就任の祝賀の儀を行い、慶喜が大政奉還を行った二条城。二条城からも全84面の障壁画が一堂に会しました。
満開の桜が印象的な黒書院一の間は狩野尚信(探幽の弟)、諸大名を圧倒する大広間四の間の松鷹図は狩野探幽によるもの。徳川将軍家の威光を見せつけるような趣です。
二条城の障壁画大きな話題を呼びそうな秋の大型展ですが、会期は短めの48日間。しかも東京展だけで巡回はありません。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月7日 ]