展覧会で紹介されているプリンセスは、以下の三人です。
陳国公主(第5代皇帝景宗の孫)
トルキ山古墓のプリンセス(初代皇帝耶律阿保機の妹?)
章聖皇太后(第6代皇帝聖宗の元妃)
ちょっと馴染みが薄い契丹を、「お姫様」という切り口で紹介していくのはユニークな趣向です。
展示室展示室に入ってすぐに展示されているのは、陳国公主の遺物です。
公主とは、皇位継承の一族につらなる女子のこと。陳国公主は18歳で亡くなった第5代皇帝景宗の孫で、身分が高かった彼女は、金製の仮面をつけて夫と寄り添うように埋葬されました。
仮面をつけた埋葬は、中国ではみられなかった風習。瞳が大きい丸顔の仮面は、生前の姿に倣ったとされています。
陳国公主の金製仮面と鳳凰文靴その奥には、2003年に未盗掘で発見されたトルキ山古墓でから出土した彩色木棺があります。1000年以上前の木棺ですが条件が恵まれていたため、表面には色鮮やかな彩色が残っていました。
正面には護衛の契丹人、棺台には鳳凰が描かれ、四隅には金銅製の獅子像が配された豪華な木棺に葬られていたのは、30歳代の女性。副葬品から身分が高い人物と推測されており、初代皇帝耶律阿保機(やりつあぼき)の妹、ユルドゥグ公主との説もあります。
彩色木棺最後のプリンセスは、章聖皇太后。皇位継承の際の謀略で幽閉されましたが、後に復権。夫である第6代皇帝聖宗を供養するために建てた白亜の仏塔からも、極彩色の奉納品が見つかっています。
契丹には仏教が広く浸透し、11世紀には多くの仏教事業が行われました。展覧会では菩薩の頭部、釈迦如来坐像なども仏教に関連する数々の品々も展示されました。
菩薩頭部、釈迦如来坐像九州国立博物館が開館前から準備をすすめてきた大型特別展である本展。
静岡県立美術館、
大阪市立美術館と巡回し、最後に東京にやってきました。
今秋には東京国立博物館でも「中国 王朝の至宝」展が開催。契丹を含めて、中原だけではない中国歴代王朝が紹介されます。日中の国交が正常化して40年。中国の考古の世界は、ますます私たちを楽しませてくれそうです。(取材:2012年7月11日)