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    レポート
    大阪市立東洋陶磁美術館に並ぶ最高級ランクの中国陶磁
    大阪市立東洋陶磁美術館 | 大阪府

    2024年4月にリニューアルオープンした大阪市立東洋陶磁美術館(以下、MOCO:The Museum of Oriental Ceramics, Osaka)において、大阪市・上海市友好都市提携50周年記念特別展「中国陶磁・至宝の競艶―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館」が始まりました。 中国を代表する世界的な博物館として知られる上海博物館より日本初公開作品22件を含む計50件の中国陶磁の名品が出品され、その内10件は中国において最高級ランクの「国家一級文物」が並ぶ豪華な展覧会となっています。

    会場は景観の美しい中之島公園に位置し、近くには、ネオ・ルネッサンス建築の傑作「大阪市中央公会堂」や重要文化財「大阪府立中之島図書館」も見渡せます。



    東洋陶磁美術館


    第1部展示「至宝精華―上海博物館の至宝」では、同館が誇る中国陶磁コレクションのうち、海外初公開の6件を含む作品が紹介されています。 ひときわ大きなこの壺は、高さ65.5×径77.5cm、重さ約115kgの現存最大級のドラゴンジャー。専用の土づくり、成形から専門の窯での焼成まで多くの時間と手間を要しますが、成功するのは100個のうち5個ほどといいます。上海博物館を離れてMOCOにて世界初公開、貴重な機会です。



    右:《青花雲龍文壺》明時代・正統(1436-1449)/景徳鎮窯 上海博物館


    目の前がパッと華やぐマルチカラーの独特な形の瓶は、清朝の宮廷で崇拝されたチベット仏教の儀礼用とされています。蓮の花、金魚、宝傘などの八宝が描き込まれ、やきものの黄金期:清朝磁器の芸術の高さが分かります。



    《緑地粉彩八吉祥文瓶》清時代・乾隆(1736-1795)/景徳鎮窯 上海博物館


    青緑色の釉薬を使って鮮やかなターコイズブルーを再現したこの作品は、じっと見ていると繊細に施された表面のデザインが一層浮き出てくるような不思議な感覚にとらわれます。



    《松石緑釉剔刻蕃蓮唐草文瓶》清時代・乾隆(1736-1795)/景徳鎮窯 上海博物館


    定窯は後に宋代五大名窯の一つとされた白磁の一大産地であり、特にこの時代は宮廷向けの最高級の白磁が生産されました。表面の雲龍文は型を作品に押して模様をつける“印花”という技法を用い、鮮明に模様が浮き出ていることから極めて状態の良い作品とのことです。 やわらかなアイボリーホワイトと口縁部の金属の覆輪、1000年前のモダンなデザインです。



    一級文物《白磁印花雲龍文盤》北宋時代(960-1127)/定窯 上海博物館


    陶磁器製の枕は唐代に誕生し、宋代には磁州窯を中心に展開しました。如意形と束蓮文には吉祥の願いが込められているので幸せな夢をということでしょうが、それにしても硬そうな枕、熟睡できたのかな・・・。



    《白地黒掻落束蓮文枕》北宋時代(960-1127)晩期-金時代(1115-1234)/磁州窯 上海博物館


    1800年以上前に造られた木造高層建築の20分の1ほどのミニチュア模型は、墓の中の副葬品。当初は緑色の釉薬に覆われていましたが、土の中で銀色に変化しました。



    《緑釉楼閣》後漢時代(2-3世紀)/大阪市立東洋陶磁美術館


    洪武年間の宮廷用器と考えられています。「春壽」銘のある青花雲龍文梅瓶は、世界に僅か4件しかなく、そのうちMOCO所蔵品には唯一蓋が伴っています。上海博物館からお越しの陶瓷研究部副主任は、「蓋があっていいですね…」と呟いておられました。 日本と上海に離れていた2作品が隣同士に並ぶ競艶も見どころです。



    《青花雲龍文梅瓶(「春壽」銘)》明時代・洪武(1368-1398)/景徳鎮窯 大阪市立東洋陶磁美術館



    《青花雲龍文梅瓶(「春壽」銘)》明時代・洪武(1368-1398)/景徳鎮窯 上海博物館


    上海博物館には、これまで“空白期”と呼ばれていた明時代・15世紀の正統・景泰・天順の三代(1436~1464)の景徳鎮磁器の優品が多数所蔵されています。この“空白期”に現れた作品は、碗の外面に青花で描かれた波涛文内に、鮮やかな紅彩の九種類の海の瑞獣が描かれています。展示室でひときわ目を引く紅色に惹かれ、近づいてみるとそれは、ユニークな海獣デザイン。宮廷の宴席で使用されていたセットでしょうか。海外初公開。



    一級文物《青花紅彩瑞獣波涛文碗》明時代・正統~天順(1436-1464)/景徳鎮窯 上海博物館


    正面から見ただけでは分らないのですが、髷が蓋、右腕の袖口が注口、左腕が把手の舞女形の酒注です。同様の用途の《五彩童子像》が並んでいますのでじっくりご覧頂きたいです。



    《五彩金襴手婦女形水注》明時代(16世紀)/景徳鎮窯/大阪市立東洋陶磁美術館


    北宋時代の宮廷用青磁を生産した汝窯の伝世品は世界で90件余りと言われ、その内10件を所蔵する上海博物館より、2件が出品されています。「天青」と呼ばれる青味を帯びた釉色が特徴の本作品は、最高峰の青磁です。ここで再び、上海博物館からお越しの陶瓷研究部副主任が「汝窯の青磁はオークションでは、約42億の価値がついたものも知られています」と。驚きました。



    ←:一級文物《青磁盤》 右:《青磁洗》ともに北宋時代(960-1127)/汝窯 上海博物館


    清朝宮廷御用磁器の希少なアップルグリーン色のこの作品は海外初出品、初めて日本で展示されます。鮮麗な紅色の「豇豆紅釉」は特に希少で製作が難しいとされていて、紅色を出そうとしたところが窯変(窯の中で焼成中に色の変化が生じること)によって、奇跡のアップルグリーンが誕生したものです。直径7cm程のマカロンのようなフォルムがとても可愛らしい作品です。



    左:一級文物≪蘋果緑釉印盒≫ 右:≪豇豆紅釉印盒≫ともに清時代・康熙(1662-1722)/景徳鎮窯 上海博物館


    中国陶磁の世界的な殿堂である上海博物館から出品されている50件の内、10件が国宝級の「国家一級文物」です。海外展の場合、一級文物は全体の2割までとの決まりがあるそうですので、東洋陶磁美術館がこれまで展覧会協力や学術交流を通じて同館との交流を積み重ね、友好を深めてきた証しだと思いました。見応えある本特別展に加えて、国宝《油滴天目茶碗》はじめ、新収蔵品の乾隆帝筆《松霞室》が 初公開(12月27日まで)されています。

    展示ロビーやラウンジも居心地がよく、館内のカフェからは大阪市中央公会堂が臨めるなど、ゆったりと芸術鑑賞に浸れる東洋陶磁美術館に是非お出かけください。

    [ 取材・撮影・文:hacoiri / 2024年10月18日 ]


    会場
    大阪市立東洋陶磁美術館
    会期
    2024年10月19日(土)〜2025年3月30日(日)
    開催中[あと117日]
    開館時間
    午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
    ※12月20日(金)、21日(土)は午後7時まで(入館は午後6時30分まで)
    休館日
    月曜日、11/5(火)、1/14(火)、2/25(火)、年末年始(12/28(土)~1/4(土)) ※11/4(月)、1/13(月)、2/24(月)は開館
    住所
    〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島1-1-26
    電話 06-6223-0055
    公式サイト https://www.moco.or.jp/
    料金
    一般:1,800(1,600)円
    高校生・大学生:800(700)円

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方(要証明)は無料
    ※上記の料金で館内の展示すべてをご覧いただけます。
    展覧会詳細 中国陶磁・至宝の競艶 ―上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館 詳細情報
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