今までのアートフェアの枠組みを超えた新しいフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO」は今年で6回目を迎えます。次世代のアーティストの飛躍へのきっかけ、来場者とアーティストのコミュニケーションの場として、毎回広がりを見せています。
京都府京都文化博物館 別館、京都新聞ビル 地下1階に加え、今年は真宗大谷派(東本願寺)の名勝「渉成園(枳殻邸)」がメイン会場に加わりました。普段は非公開の茶室や書院など貴重な建造物の中で現代アートを味わえるのも大きな楽しみの1つです。
京都府京都文化博物館 別館

京都府京都文化博物館 別館入口
京都府京都文化博物館 別館には、19組のアーティストが出展しています。

会場風景(京都府京都文化博物館 別館)

ガラス素材を使った袁方洲さんの作品

公募で選ばれた湯浅敬介さんと作品
このフェアの一番の醍醐味はアーティスト本人と話ができ、作品に触れること、作品を購入できることです。作り手から制作の過程や想いを聞くと、目の前の作品がどんどん奥深くなり、そう欲しくなる! ギャラリーは敷居が高くて……と尻込みしている人、はじめての「アートを買う」という体験をこのフェアで味わってみませんか。

会場風景(京都府京都文化博物館 別館)
一方、辰野金吾とその弟子・長野平治が設計した建物と、dot architectsの会場デザインによって設営された会場の組み合わせのユニークさ。これはほかでは味わえません。過去にこのフェアにいかれた方は写真で気づいたかもしれないですが、今年は2階建てではなかったです(ちょっと安心したような、なんか物足りないような)。
京都新聞ビル 地下1階

会場風景(京都新聞ビル 地下1階)

長田綾美さんの作品
京都府京都文化博物館 別館から徒歩15分ほどにある京都新聞ビル 地下1階には、12組の作家の作品が並んでいます。薄暗く、インクのにおいが残る独特の空間は、ホワイトキューブで得る作品の印象とは異なる側面を見せてくれます。

日本画家 山羽春季さんの作品
写真は、踊りや身体の動きをコマ送りで描く山羽春季さんの作品。今回のフェアのメインヴィジュアルに使用されています。

明石雄さんの作品
インパクトがあった明石雄さんの作品。ペインティングには土を何度も擦り付けて仕上げています。非現実な印象と会場がマッチして惹きこまれました。

インパクト大!モフモフ・コレクティブの作品
渉成園(枳殻邸)
この会場では9組の若手アーティストと彼らを推薦した14組の「アドバイザリーボード」による展示が繰り広げられています。

入口にはヤノベケンジさんの《SHIP‘S CAT(Mofumofu22)》

鶴田憲次さんの作品展示風景

山西杏奈さんの作品(部分)
他の会場と同様に見ごたえのある若手の作品が並んでいます。山西杏奈さんの彫刻作品は、つい触りたくなるような質感を見ることができます。手触りを視覚で感じることのできるおもしろさがあります。

八島良子さんの作品
自分で豚を育てて食べるまでの一連を記録した作品「メメント・モモ」は、じっくり時間をかけて消化したい大作でした。

池上高志さんの《What you can see is what you can’t see》

東本願寺から東に約200mに位置する、池泉回遊式庭園でアートを味わえるひとときは、とても贅沢。梅の花も咲き、改めて京都という土地を味わうこともできました。

Goh Uozumiさんの《Mk.God》(一部)

重信会館の外観
これら3会場のほかに、重信会館では昨年のマイナビART AWARD2022を受賞したGoh Uozumiさんによるインスタレーションが公開されています。
マイナビART AWARDとは、メイン協賛企業の株式会社マイナビ支援のもと、若手アーティストの活動支援をする賞です。今年も3月1日に審査が行われ、翌2日に受賞者が発表されました。

「ARTISTS' FAIR KYOTO 2023 マイナビ ART AWARD」授賞式の様子

最優秀賞受賞作品(部分)
最優秀賞は宇留野圭さん。作品は京都新聞ビル 地下1階に展示されています。審査員に色々な物語を感じさせた作品は、来場者にどんな世界をみせてくれるのか、ぜひ体感してください。

受賞されたアーティスト 左から八島良子さん、明石雄さん、宇留野圭さん(最優秀賞)、山羽春季さん、山西杏奈さん(宇留野さん以外の4名は優秀賞受賞)
そのほか、過去の出品作家とコラボレーションした展覧会がサテライトイベントとして開催されていたり、昨年清水寺に出現して話題となったこけしがモチーフの巨大作品《花子》が今年は東本願寺御影堂門前に登場するなど、どこの会場も見逃せません。

本山ゆかりさん《Ghost in the Cloth》 (サテライト会場 千總ギャラリー)
今までのアートを取り巻く環境を変えようという想いから始まったARTISTS' FAIR KYOTO。鑑賞にとどまらず作家と話したり、さらにもう一歩踏み込んだりすることで私たちも一緒に改革を楽しめるのではないでしょうか。京都で、若手アーティストがわたしたちの来場を待ってくれています!
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2023年3月2日 ]
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